■宮崎式就農支援力その体制
宮崎県の新規就農者数は2013年の290人から2018年には402人と右肩上がりに増加。農業法人に就職する法人就農者は、2013年の117人から2018年には238人とこちらも大幅に増えています(宮崎県農政水産部 統計でみる宮崎県の農業2018(平成31年3月作成))。
その背景には新規就農者を確保するために県外の農業に興味関心を持った層に対して、イベントや相談会を開催し、相談を受ける機会を作り、まずは知ってもらおうという努力があります。そして農業に興味を持った方に、宮崎に来て「お試し就農」をしてもらうための機会を準備しています
また、県内においてもJA中央会やJA経済連、農業振興公社などと連携を図るほか、繁忙期には他産業と連携するなどして、農業労働力の確保に努めています。
優れた取り組みを実施するだけでなく、適切なKPIを設定し、地域全体で取り組む。それが素晴らしい成果として表れている状況です。
■人材確保だけではない-定着・育成を担う充実した体制を地域ぐるみで取り組む
農業の場合は人材を確保するだけではなく、その先の「定着」が重要なポイントです。その点においても宮崎にはさまざまな取り組みが用意されています。
宮崎で就農を考える人には、まずは農作業体験や農家見学などを行う「体験講座」(数日間)が用意されており、まずは農業や宮崎の魅力に触れる研修が用意されています。そこからいざ、宮崎で農業しよう!と決意してくれた人には様々な選択肢が用意されています。
■未経験から実践的農業が学べる「みやざき農業実践塾」
これから宮崎で農業を始めたいという人におすすめなのが、宮崎県高鍋町にある「みやざき農業実践塾」。宮崎県内で新規就農を目指す人のための研修施設です。
1年間または半年の「経営実践コース」では、農業の基礎知識から野菜栽培に関する実践的な技術までを学ぶことができます。
実習ではミニトマトやきゅうり、イチゴ、ピーマンなど、施設栽培を中心に研修品目を選択。塾生それぞれに約4a(400平方メートル)のハウスやほ場が割り当てられ、土づくりから種まき、定植、収穫、販売まで、1年を通じた栽培技術を習得できます。また、農薬の使用方法や農業機械の使い方など初心者でも一から学べることはもちろん、農業用機械免許(大型・けん引)の研修・試験も可能となっています。研修中からハウスなどの就農地を探すサポートも実施されており、スムーズな就農準備が可能となっています。
■就農したいエリアで扱いたい品目が学べる「トレーニングセンター」
また、就農したいエリアで、扱いたい品目の栽培方法が学べる「トレーニングセンター」も素晴らしい取り組みです。宮崎県では県内各地に数多くの就農トレーニング施設が行政・JA・農業振興公社の連携により整備されており、既に多くの新規就農者がここを巣立っています。研修品目は施設によって異なるため、就農者が希望する品目の栽培方法を選択して、学ぶ事が可能です。また、研修を通して地域の農家と交流できるため、就農準備や就農後の準備がスムーズに進められます。
宮崎のこうした就農希望者に寄り添う切れ目のない対策は、まさにその人の「人生を丸ごと支援する」体制になっています。そうした部分が就農者を増加させる所以であると強く感じています。
■宮崎県にみた農業活性の在り方
今回は宮崎県の就農への取り組み等をご紹介しました。私が日本全国様々な地域の農業振興を支援する仕事をしている中で、特に宮崎県に感じるのは「一体感」です。私たち民間企業を受け入れて一緒に取り組むそのスタンス。また、自治体のみならず、JA、生産者、関連産業、そして県民が一体となって、就農希望者を地域へ取り込んでいく。そうしたところに宮崎の強みを感じています。
大体の地域には必ずパワーバランスがあるもので、正直足の引っ張り合い(笑)をしているケースを沢山見てきましたが、そうではなく、課題解決のために新しいものを受け入れ、地域全体で基幹産業を盛り上げる体制が自然と出来ている。そうした印象を受けました(これは、民間企業の視点としてはとても大切で、特に農業は地域のパワーバランスをしっかりと図りながら関係性を構築することが必要です。その困難さを最も感じなかった地域と言っても過言ではないのが宮崎県でした)。
県の担当者とお話していた時に、宮崎の一体感の礎を作ったといえる、象徴的な出来事について聞くことがありました。平成22年に発生した「口蹄疫」についてです。農業は動植物を育て、それを価値化するビジネスですが、口蹄疫発生の影響により県全体で29万7808頭の家畜の命を絶たねばならないという産業として絶望的な状況になったそう。県は「非常事態宣言」を発表し、農業のみならず、観光業、商工業、流通業など各方面に深刻な影響をもたらしました。この口蹄疫の発生の際、県全体で産業間の垣根を越えた「連携」の大切さを学び、それが今の「連携」に反映しているとおっしゃっていました。
平成から令和への変化は、単に元号が変わっただけでなく、政治経済や国際関係、あるいは気候や人の価値観の変化にも表れています。今後はこうした変化に、的確に対応し、地域ぐるみで連携して対応できる地域が最も強く、そして「生き残れる組織」だと思います。この宮崎県の取り組みが地域社会の発展そして農業の未来につながっていくよう今後も応援していきたいと思います。
【「ビジネス視点」で読み解く農業】「農業」マーケットを如何に採算のとれるビジネスとして捉えていくか-総合農業情報サイト『マイナビ農業』の池本博則氏が様々な取り組みを事例をもとにお伝えしていきます。更新は原則、隔週木曜日です。アーカイブはこちら