元受付嬢CEOの視線

愛人クラブに所属… 受付嬢時代に「本当にあった怖い話」

橋本真里子

 オリンピックは無観客開催となりましたが、テレビから応援するだけでも勇気や感動をもらう日々でした。真っ直ぐに目標に突き進む姿というのは、本当に素敵ですね。スポーツ観戦が大好きな私としては、毎年の甲子園にオリンピックがプラスされて、例年よりも熱い日々を過ごしておりますが、そのようなイベントがなくとも、今年の夏も酷暑ですね。

 そこで今回は、私が受付嬢時代に体験した「怖い話」をしたいと思います。

 「本当にあった怖い話」といっても、幽霊の話ではありません。職場で受けた人間の所業です。「こんなことする人なんているんだ…」と、ヒヤっとしたこと出来事が何件があったのです。

恐怖の体験その1

入社した当日から「愛人クラブ」に属しているという噂を広められた

 今となっては…というか、当時も半分笑い話と捉えていましたが、実話です(笑)

 私が受付として入社した日、すでにその受付で働いていた受付嬢の一人に「橋本さんは愛人クラブに所属していて、今回もそのコネで入社してきたらしい」という噂を立てられたのです。

 私の耳にその話が入ってきたのは入社から1週間後くらいでしたが、聞いた時は驚きでした。「そんな露骨な嘘で嫌がらせする人が本当にいるんだ!!」と。

 それと同時に「どうしてそんなバレる嘘をつくのだろうか」「そもそも愛人クラブってなんだ(笑)」といういろんな感情が押し寄せてきました。

 でも一番強く感じたのは「思った以上に大変な職場に入っちゃったぞ…」ということです。入社早々このような噂を立てられたのはもちろん初めてのことでした。こんな噂を信じる人がいるのかと思いましたが、上司にも報告相談したところ、なぜか上司から謝罪されました(笑)。

恐怖の体験その2

ロッカーの鍵を隠された

 受付嬢は現場に就く前に制服に着替えなければなりません。それゆえ、ほとんどの企業では受付嬢に1人1つ、ロッカーを用意してくれます。制服や、業務に関する備品や身支度を整えるのに必要な私物などを保管するためです。前回話題にした「靴」もそのロッカーで保管します。

 受付嬢のロッカーというのは、たいていが控室の中にあり、一般の社員が出入りするような場所にはないので、実は、それまで派遣された会社では鍵をかけて管理をしたことがありませんでした。非常時に受付嬢同士で何かを貸し借りすることもありますし、それまでの現場ではモノがなくなるようなことは一度も経験してことがなかったからです。ですので、新たに受付嬢として働き出したその企業でも、いつものごとく鍵をかけず帰宅しました。

 …ところが翌日出勤すると、私のロッカーに鍵がかけられていたのです。鍵も隠されていました。

 制服なども全部その中に入っていました。スペアキーもすぐに見つからず、着替えることができません。

 その日は、他の受付嬢の皆さんの使っていない制服などを借りてなんとか業務に就くことができました。

 隠されたロッカーの鍵が見つかったのは数年後のことでした(笑)忘れていた頃に見つかって、その時には笑い話にできましたが、鍵を隠された当時は「この現場はロッカーの鍵は徹底的に自己管理しなければいけない」「スペアキーの管理も徹底せねば!」と切実に感じました。

 この“事件”に直面した時は「テレビで見たことある嫌がらせだな」と思いつつ、私を歓迎していない人がいるという事実に、ちょっと参りました…。しかも入社直後のことです。陰湿な嫌がらせをされて、その嫌がらせをした可能性のある同僚と何事もなかったかのように笑顔で一緒に働くにはタフさが要求されました。

恐怖の体験その3

派遣社員と正社員の露骨な格差

 これは、私が短期で働いた現場で起きたことで、私が退職後に起きたことです。

 その企業の受付スタッフは正社員と派遣社員で構成されていました。短期間の就業であったにもかかわらず、私自身もさまざまなシーンで「働きづらさ」や「格差」を感じた現場でした。退職後に、その企業で受付嬢を続けていた仲間から「困っている」といった内容の連絡をもらったのです。

正社員の人が派遣社員の人についてクレームや告げ口をしているというのです。

「派遣の受付嬢がサボっている」

「ネイルが派手だから、派遣の人はネイル禁止にしてほしい」

 これを聞いた時に「やっぱり辞めておいてよかったな…」と思いましたが、そもそも「派遣の人が…」という表現に差別を感じます。

 正社員がリーダーを務めているわけなので、問題視するのであれば、告げ口をする前にみずから現場で話し合いを開くべきだと思います。それを派遣社員たち本人にではなく上司に言いつけるという行為が非常に残念だなと感じました。

 雇用形態というのは、働き方の種類の話で、優劣を区別するものではないと思います。当時、「正社員が偉い」「派遣は他所者だから、待遇に格差をつけて当たり前」と考えている日本企業がまだ存在することに恐ろしさを感じました。現在もなお、その企業が有人受付を継続しているか、受付メンバーの構成がどうなっているかなどは不明です。

 受付嬢というのは、派遣社員として働くことが多く、契約更新もほとんどが3ヶ月サイクルという短い期間でやってきます。それゆえ、転職回数が必然的に増え、「派遣切り」に遭うこともあるため、様々な企業の裏側に触れる機会が多かったように感じます。そういった経験が、今となっては「経営」という仕事に活かされていると感じることがよくあります。

ゾッとさせるのは幽霊ではなく人間

 社会人として生きていく上で、改めて基本的なことを気付かされたのが今回ご紹介した「恐怖体験」ともいうべき陰湿な嫌がらせです。

  • 嘘はつかない
  • 人が嫌がることはしない
  • 仕事の恨み(!?)は仕事で晴らす

 それと同時に、私には必ず助けてくれる人や理解してくれる人がいました。嫌な思いをして負の感情を膨らますよりも、助けてくれた人に感謝を抱き、自分も助ける側に回りたいと思わせてもらいました。何よりも、「自分がぶれないことが一番大切だ」ということも実感しました。嫌がらせをされたから、同じ嫌がらせを仕返す…これでは結局自分もその人と同じ土俵に立ってしまうことになりますよね。

 社会において、ゾッとさせるのは幽霊ではなく、実は人間なのではないでしょうか。一方で、心を温めてくれたり、支えてくれるのも人間であることも忘れてはならないと思います。

橋本真里子(はしもと・まりこ) 株式会社RECEPTIONIST 代表取締役CEO
大学卒業後、IT企業を中心に上場企業などで受付業務に従事。受付嬢として11年間、のべ120万人以上を接客。2016年にRECEPTIONISTを設立し、翌年にクラウド受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。日程調整ツール「調整アポ」、会議室管理サービス「RECEPTIONIST For Space」ともに、コミュニケーションをワンストップで効率化する世界を目指し、年間利用回数は120万回超。

【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。アーカイブはこちら