「ビジネス視点」で読み解く農業

「一次産業で働くことが特別でない未来」を作る マイナビ農業の新しい取り組み

池本博則

 毎年8月という月はマイナビ農業のお誕生月です。こちらの連載の第一回目でも熱く語らせていただきました通り、想いをもってこのマイナビ農業をそして農業を活性化する事業に取り組みをスタートさせていただいているわけですが、新規事業として取り組んでいる事業だからこそ、年を重ねられることに私自身とてもとても喜びを感じながら事業に取り組んでいます。

 私はよく、失敗を恐れることなくガンガン取り組むタイプだと思われるのですが、実はまったくそうではなく、結構一つ一つの事を気にして、日々迷いながら、そして細かい所は超デリケートに対応する小心者だったりします(自己評価ですが(笑))。

 だからこそ、新規事業に取り組む=失敗したら撤退しなくちゃいけない。という事に日々危機感を持ちながら、そうならないように今日より明日、今年より来年が更に良くなるように、前進して進めよう。と心に言い聞かせながら取り組んでいます。そうした意味でもマイナビ農業の誕生日は私にとってはとても大きなライフイベントなのです。

 前書き長くなりましたが、マイナビ農業は今年2021年で丸4周年となりました。こうして年を重ねられることはとても嬉しい事です。そしてこの継続の背景には、私たちを認知して、様々な課題をご相談し、ご契約をいただくお客様の存在。成長を見守り、新規事業の挑戦を応援してくれるマイナビという会社の存在。そして日々フロンティアな取り組みを共に戦ってくれる事業部のメンバーひとりひとりの存在。そうした人に囲まれている事、続けられていると痛切に感じています。

 さて、そんな今日この頃ですが、このタイミングで。この4年間の経験を経てマイナビ農業としてまた新しいサービスを開始することを今日は宣言するとともに、少しご紹介をさせていただこうと考えています!!

■私たちがみてきた地域の農業振興の現場

 日本の農業においては、就労人口の減少、高齢化の進行がすすみ、未来の農業を担う担い手、後継者不足は大きな問題です。事業創業時から各地域のニーズをお伺いしていく中で、マイナビへのご相談やご要望はまさにこの人の部分について数多くのご相談をいただいていました。

 実際の数値で見ても、農林水産省による「食料・農業・農村白書」によると、農業従事者の変化は2010年の205.4万人から2021年には136.3万人と11年間で39.4%減少、49歳以下の青年層を見ると、30.7%減少。さらに農業従事者の平均年齢を見てみると、2020年に67.8歳となり、2010年の66.2歳から約2歳高齢化が進んでいます。

 こうした慢性的な人口不足、就農者の高齢化に悩まされる農業では、この10年間で農業者の減少、高齢化がさらに加速しています。

 また、この状況に輪をかけてダブルパンチのように、新型コロナウィルスの影響によって海外からの外国人技能実習生が激減。2020年10月末時点の農業分野における外国人の労働者数は、3万8,064人となっており、前年10月時点と比べて約2,600人増加しているものの、その増加率は7.2%で、前年の14.3%に比べ低下、人出不足を長年外国人技能実習生に頼ってきていた農業に対し、今、人手不足はさらに促進している状況となっています。

■農mersからみてとれた我々に対してのニーズ

 マイナビ農業は、今まで人材確保に対して「待ち」の姿勢しか取れなかった農家が、より積極的に行動できるものはないかと、農業をやりたい人と農家つなぐアプリ「農mers」を約2年前からリリース展開してきました。

 このサービスは、農家の方が働いてほしい案件を公開し、農業をやってみたい人は興味のある案件を見つけ、農家に直接コンタクトをとり、両者がマッチングすると、直接メッセージのやり取りが出来るようになり、勤務時間などの条件をすり合わせ、お互いの合意が取れれば実際に仕事をすることが可能なマッチングアプリです。

 当初からすべてのサービスを無償で提供しており、マイナビとしてまずは産業においてどのような求人ニーズがあるか?どういった方が農業に興味を持っていただけるか? というマーケットのニーズや反応をとらえるためのテストアプリとして各地域の農業振興者の団体や農家さんと相談をしながら実証実験を行う等の利用をメインで活用しており、本格的な有償サービスとして提供をしているものではありませんでした。

 そういった背景もあり、事業としてはほとんど農mersアプリのPR等をおこなっていなかったのですが、前述した昨年のコロナ禍の影響もあり、農mersの総ユーザー数は2020年1月の1,850人から2021年1月15,814人と、コロナ禍の1年間で約8.5倍に増加しました。

 こうした成果が生み出されている状況において今、「農mers」についての取材のご依頼や、農業で働くという事についてのご意見等を取材される機会も増えてきています。

 コロナ禍を経て大きな社会的な構造、そして人々の関心度が大きく変容してきたことをいち早くキャッチ出来る出来事であり、そうした背景から次なるサービス開発をスタートしてきたのでした。

■1次産業のための総合求人サイト『マイナビ農林水産ジョブアス』

 今回作り出して世に生み出すサービスはシンプルに当社としての事業の中核の一つでもある「求人サイト」。

 これまでの4年間は農業の情報サイトという観点から、飛び石的な事業の作り方をおこない、それまで関連性のなかった農業という産業をダイレクトにテーマにする情報サイトからチャンネルインして、リソースを育ててきましたが、次のアプローチは当社の最も強みを生かした「人材」の部分からのサービスインを実現させることにこだわりました。

 コロナの影響により、我々の生活については大きな変化が生まれていく中で、農業や1次産業においての働き方や生き方。そしてその産業自体の構造について今だからいよいよマイナビとして本格的にこの農業界の人材採用について本当に本格的に取り組みをおこなっていこうと判断をし、新しいサービスの開発を進めていたのでした。

 このサービスの全容についてはまた改めて小出しにしていきたいなと思っているのですが、このサービスでまず成し遂げたいこと、それは、それは一次産業で働くことを選択肢として持っていない求職者に興味関心を持ってもらうことで他産業から人材が流入し、産業を支える力を増やすこと。わたしたちは新卒採用、中途採用、アルバイト採用、シニア採用など 全労働人口をカバーする人材サービスを提供してきたマイナビです。

 だからこそできる、「1次産業に多くのユーザーの獲得」を実現していきたいと考えています。加えて、マイナビ農業で実現してきた情報を通じて「農業関係人口」の創出することも継続していきたいと考えています。

 この4年間マイナビ農業を通して得てきた情報やノウハウがあるからこそ、今、自信を持って1次産業の人材サービスを満を持して提供できると思っています。

池本博則(いけもと・ひろのり) 株式会社マイナビ 執行役員 農業活性事業部事業部長
徳島県出身。2003年に株式会社マイナビ入社。就職情報事業本部で国内外大手企業の採用活動の支援を担当。17年8月より農業情報総合サイト「マイナビ農業」をスタートし、本格的に新規事業として農業分野に参入。「農業の未来を良くする」というVISIONを掲げ、日々農業に係る全ての人に「楽しい」「便利」「面白い」サービスを提供できる事業の創出のため土いじりから講演活動まで日本全国を奔走中!

【「ビジネス視点」で読み解く農業】「農業」マーケットを如何に採算のとれるビジネスとして捉えていくか-総合農業情報サイト『マイナビ農業』の池本博則氏が様々な取り組みを事例をもとにお伝えしていきます。更新は原則、隔週木曜日です。アーカイブはこちら