CAのここだけの話

フライトゼロのCA、未知の業界で「新卒」から出直し 副業を阻むPCの壁

垣花実里

 SankeiBiz読者のみなさんにだけ客室乗務員(CA)がこっそり教える「ここだけ」の話。第111回は欧州系航空会社で乗務11年目の垣花実里がお送りいたします。

通算乗務歴17年のベテランCAである垣花実里さん。欧州系航空会社に勤めるかたわら、「願望実現のサポート」をおこなうライフコーチとしても活動中。提供:本人
一人旅で訪れたニュージーランドにて。提供:執筆者
人類の叡智が感じられる遺跡への旅行が好き! 写真はペルーのマチュピチュにて。提供:執筆者
私の人生観を変えたドルフィンスイミング。写真は大西洋に浮かぶ島国バハマでの1枚。提供:執筆者

 欧州系航空会社乗務11年目の垣花です。長引くコロナ禍、CAはどんな風に過ごしているのだろうと頭をかすめる方もいるかもしれません。一現役CAである私が今、何を考え、何をしているか。コロナ禍の中でのリアルライフをお伝えします。

 私の勤める欧州系航空会社は2020年3月下旬から日本への乗り入れをストップさせ、その数ヶ月後から大幅に減便して運行を開始しました。

 ピーク時、欧州~東京間は週14便も運行をしていましたが、現在は週に3便という状況です。いかに便数が減ったかわかっていただけることでしょう。

 結果、CAは余剰状態となり、希望者は無給休暇を取得することができます。

つぶしのきかない「しがないCA」

 私は新卒でアジア系航空会社にCAとして入社し、その後現在の欧州系航空会社に転職しました。これまでずっとCAとして働いてきて、そんな自分に焦りや劣等感がありました。

 これまで外資系航空会社でのCA経験しかない自分には、日本での他の仕事はとても務まらないと思い込んでいたのです。そんな焦りから、10年以上前から自己啓発(自分磨き)にハマりました。

 コーチングを学んでそれを使ったカウンセリング業や、webライターの仕事に挑戦。愛用する化粧品会社から「出てみない?」とお声かけいただきコスメのPRの仕事にも携わることもありました。CA以外の仕事をするチャンスがあれば、迷わず飛び込み挑戦してきたのです。

ピンチはチャンス!? 副業CAを阻むPCの「壁」

 そんな折に、航空業界はコロナ禍に見舞われました。昨年、フライトがゼロの状況になって真っ先に思ったことは、「ヤバい! 食べていけない! 私には何もできない!」でしたが、その一方、心のどこかでは「これはもしや、俗にいう“ピンチはチャンス”という状況なのでは!?」と思う自分もいました。10年以上も挑戦してきた自分磨きのおかげだと信じています。

 「何かしたい! でも自分に何ができる!?」と 頭でっかちに考えすぎて身動きが取れなくなっていた時、知人に「暇なら手伝って!」と声をかけられて広告業界に足を踏み入れました。

 CAにはPC(パソコン)操作が苦手な人が多く、「CAあるある」のひとつでもあります。客室乗務にはWord、Excel、PowerPointはまったく必要ありません。学生時代に触れたことはあっても社会人になってから実務で触れる必要はなかったのです。

 広告の仕事を始めた私にまずぶち当たった壁も、PC操作でした。一つの操作をするために“Google先生”と向き合って数時間格闘する、なんてことはザラで、40代にして新卒状態にも満たない自分が心の底から情けなく、自宅でのリモート勤務中、自分への失望感で涙を流したこともありました。

 もうすぐ広告の仕事を始めて丸1年になります。まだまだ一人前には程遠いものの、ふと見渡すと見える景色がちょっとずつ変わってきているのを感じます。

CAでは学べなかったことを学べる機会

 広告業界で仕事をするようになり、客室乗務で経験できなかったことを学ばせていただいています。

 尊敬する上司から仕事をする上での大切なことが直接学べるありがたさ。経営者思考をそばで垣間見ることができるありがたさ。様々な企業の広報の方と接することで学べること、知れること。日本社会の一部が見られること。基本的なPC操作ができるようになったこと。私なりの伝え方や提案力が磨ける環境であること。

 苦しいこともたくさんあったけれど、それ以上に成長への喜びや達成感があり、CAだけしていた自分と比べると人間的にも成長できているように感じられて嬉しいです。

CAのスキルは他の仕事で役立つか?

 先述したように、私は自分を「しがないCA」だと思っていたので、CA経験が他で役立つ、なんてことは想像できなかったのですが、異業界に身を置き、「CAをして培ってきたもの」に気づくことができました。

《CAが得意とすること・長所》

  • コミュニケーション
  • 気配り、周りへの配慮
  • 努力を惜しまない、向上心がある

 「コミュニケーション」や「気配り・配慮」は、やはりCAが得意とする分野だと感じます。取引先とのやりとりの中でも、相手の求めるものを察してそれを言葉にして伝えてコミュニケーションを円滑に取ることが難なくできます。

 また、心象を損ねることなく要望を伝えることもできます。少し間違えれば相手が否定的な印象を抱きそうな場面でも、相手に嫌われることなく進められるのはCAで培った能力のお陰だと思います。

 そして、私の周りのCAたちはみんな努力家で向上心がある人であることにも気がつきました。できないことでもすぐ匙を投げない。負けず嫌いとも言えます(汗)。

 親しい同僚の中には、このコロナ禍でもタダでは転ばないぞ! と言わんばかりにふんばっている人がたくさんいます。一年間で簿記の資格を取得した同僚もいれば、カフェ開業の夢がある同僚はカフェでコーヒー修行をしています。航空業界にとっては苦しい期間を、実りあるものにすべく努力をしているのです。

 私自身もいま、前々から気になっていたヨガの勉強も始めたいと考えているところです。(お察しの通り、これまた「CAあるある」で好奇心旺盛なタイプです…。)

この先、わたしが目指すCA像

 コロナ禍を経て、また世界が自由に往来できるような世の中になったら…今よりもっと広い視野で世界中の人との出会いを楽しみ、どんなお客様からも愛されるような器の大きなCAになっていたいです。

 そのために、様々な体験から自分の経験値や人間力をUPさせたいと思います。

 安心して飛行機旅ができる時がきたら、ぜひCAに話しかけてみてください。「他にも何か仕事をしていたりするの? コロナ禍はどう過ごしていたの?」と。

 思わぬ返答が来てビックリするかもしれません。

新卒で韓国系航空会社にCAとして入社。その後、野生のイルカと泳いだ経験から強烈なインスピレーションを得て現在の欧州系航空会社へ転職。乗務歴は通算17年。趣味は旅行、ヨガ、絵を描くこと。4歳女児の母。

【CAのここだけの話】はAirSol(エアソル)に登録している外資系客室乗務員(CA)が持ち回りで担当します。現役CAだからこそ知る、本当は教えたくない「ここだけ」の話を毎回お届けしますので、お楽しみに。隔週月曜日掲載。アーカイブはこちら