尾畠春夫という生き方 その行動力と精神の源泉とは (3/5ページ)

 「正直言えば、私は私が怖いんです。放っておくと悪いことをするのではないかという恐怖です。毎日自分を振り返っては、自分自身が悪いことをしたととにかく叱りつけている。これからも私は常にボランティアをして、感謝を続けるしかないんです」

 月5万5000円年金の使い道

 尾畠さんのボランティア作業のモットーは「自己完結」だ。宿泊場所は自分の軽自動車の車内。昼食は、地元大分の激安スーパーで買った5袋158円のインスタント麺、パックのご飯に梅干しだ。作業道具も自ら持ち寄り、メンテナンスを繰り返す。着ている服は拾ったもの。特別扱いを心底嫌い、プレゼントは受け取らない。

住居でもある軽自動車に積まれた食料は、桃と袋麺とパックのご飯のみだ。これに地面に生えているシロツメクサを摘んで食べる。人から食料を受け取らない方針だが、近隣の住民が尾畠さん不在のときに置いていくこともあるという

住居でもある軽自動車に積まれた食料は、桃と袋麺とパックのご飯のみだ。これに地面に生えているシロツメクサを摘んで食べる。人から食料を受け取らない方針だが、近隣の住民が尾畠さん不在のときに置いていくこともあるという

 「現場で、カッターの切れが悪くなったら、どうやって研ぐか知っている?」と尾畠さんは私たちに問うた。答えがわからないので、当てずっぽうで「現場に落ちている石を使うのですか」と返すと「違う!」とハリのある声で教えてくれる。

 「カッターはコンクリートで研ぐ。そうするといくらでも切れるようになる。昔、魚屋を開こうと考えていたとき、お金を貯めるために東京で鳶職をしていたことがあって、そこでの経験が生きている。今日も現場で、重たい土砂をどうやって運ぶかっていうときに、ここにあるフックをうまく使って運び出した。『物は有限、知恵は無限』。これは大事な言葉だと思う」

 そう言うと、尾畠さんは、ジッと私たち取材陣を強い目でみながら、日本社会に警鐘を鳴らした。

 「日本で原油が出るって知っていますか。新潟です。新潟で出るんです。でも少ししか出ない。とても足りない。日本は物がない国。だけど『物がないからできない』じゃない。物がないなら知恵を使うのです」

 尾畠さんは、1カ月5万5000円の年金生活だ。そこから、電気代、ガス代、水道料金、ボランティアへ駆けつける車のガソリン代などの維持費、家の固定資産税を払う。一切、人の世話にはならない。お金が足りなくなれば食費を削って「調整する」という。

 「私にしてみれば、梅干しとパックのご飯、そして、フランス料理を食べたいなって思ったときは、そこのインスタントラーメンを食べるのです(笑)。私は美味しいものなんて食べない。体にいいものを食べる。体にいいものかどうかをどう判断するか? それは人間に備わった五感です。日本人が忘れてしまっている五感を頼りにするんです。あなたがた、そこに生えている草でどれが食べられる草か、あなたわかりますか」

 なんとなく柔らかそうな草を指差す取材班。

「この三つ葉のクローバーでしょうか」