働き方ラボ

出世もいいが…人事異動シーズンに考える『ガンダム』のジムという生き方 (4/4ページ)

常見陽平
常見陽平

 もっとも、ここで確認しておきたいことがある。『機動戦士ガンダム』は主人公アムロ・レイが乗るガンダムと敵のライバル、シャアとの対決を軸に物語が進んでいく。しかし、現実の戦闘は量産型のジムと、ザクの対決で進んでいく。世の中は上位1%の人の意思決定で動いているかもしれないが、実際は99%の普通の人で動いているのである。

 そんなことを1冊の本にまとめた。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)という本である。2012年にリリースし、スマッシュヒットとなった。ついには文庫化もされた。日経でもしんぶん赤旗でも紹介されるという稀有な本となった。労働法学者・経済学者・社会学者が絶賛した。

 成長するな、活躍するなと言っているわけではない。ただ、高いポジションを手に入れなくても、ノンエリートとして、中空飛行でやっていくという生き方もあるはずだ。

 会社員時代、出世はしなくても、安定感のある仕事で信頼されていた人たちが多数いた。その方たちは、仕事も人生も楽しみ尽くしていた。

 出世競争も結構だ。いや、出世したくなくても、持ち上げられることもあるだろう。しかし、出世したからと言って、自分の人生を自分でコントロールし続けることができるわけでもない。様々な争いに巻き込まれたり、責任をとらされたりするのも嫌なものである。

 私はこれを中空飛行の生き方と呼んでおり、自ら実践している。物書き業界、著者界のジムでありたいと思っている。

 君たちはどう生きるか?ジムという生き方もあるのだ。

常見陽平(つねみ・ようへい)
常見陽平(つねみ・ようへい) 千葉商科大学国際教養学部専任講師
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。


【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。

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