もっとも、ここで確認しておきたいことがある。『機動戦士ガンダム』は主人公アムロ・レイが乗るガンダムと敵のライバル、シャアとの対決を軸に物語が進んでいく。しかし、現実の戦闘は量産型のジムと、ザクの対決で進んでいく。世の中は上位1%の人の意思決定で動いているかもしれないが、実際は99%の普通の人で動いているのである。
そんなことを1冊の本にまとめた。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)という本である。2012年にリリースし、スマッシュヒットとなった。ついには文庫化もされた。日経でもしんぶん赤旗でも紹介されるという稀有な本となった。労働法学者・経済学者・社会学者が絶賛した。
成長するな、活躍するなと言っているわけではない。ただ、高いポジションを手に入れなくても、ノンエリートとして、中空飛行でやっていくという生き方もあるはずだ。
会社員時代、出世はしなくても、安定感のある仕事で信頼されていた人たちが多数いた。その方たちは、仕事も人生も楽しみ尽くしていた。
出世競争も結構だ。いや、出世したくなくても、持ち上げられることもあるだろう。しかし、出世したからと言って、自分の人生を自分でコントロールし続けることができるわけでもない。様々な争いに巻き込まれたり、責任をとらされたりするのも嫌なものである。
私はこれを中空飛行の生き方と呼んでおり、自ら実践している。物書き業界、著者界のジムでありたいと思っている。
君たちはどう生きるか?ジムという生き方もあるのだ。
【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。