【ニュースを疑え】「自分をゆるめる」 働き方改革・飛騨千光寺の住職に聞く (1/4ページ)

おおした・だいえん12歳で出家し、高野山で密教を修行。スリランカで仏教瞑想を習得した。仁徳天皇の御代に両面宿儺(りょうめんすくな)が開山した名刹(めいさつ)、飛騨千光寺で住職を務める(彦野公太朗撮影)
おおした・だいえん12歳で出家し、高野山で密教を修行。スリランカで仏教瞑想を習得した。仁徳天皇の御代に両面宿儺(りょうめんすくな)が開山した名刹(めいさつ)、飛騨千光寺で住職を務める(彦野公太朗撮影)【拡大】

  • 本堂で毎朝お勤めをする。瞑想と読経を30分ずつ行う(彦野公太朗撮影)
  • 雪景色の飛騨千光寺・極楽門の前で。極楽門は平成25年、450年ぶりに復興された(彦野公太朗撮影)
  • 飛騨千光寺は江戸時代の「円空仏」で知られる。生えている木に直接彫られた仏像という(彦野公太朗撮影)
  • 人里離れた飛騨千光寺は、瞑想にうってつけの静寂に包まれていた(彦野公太朗撮影)

 働くとは何か。働き方改革は、人の生き方まで変えてしまうのだろうか。そう身構えて飛騨千光寺(岐阜県高山市)を訪ねると、大下大圓住職は笑顔で言った。「現代人は自分をゆるめるのが下手ですね」。法制化の過程では長時間労働の是正にばかり焦点が当たり、働くことの意味を問う議論は深まらなかった。緩和ケアの現場で医師や看護師の働き方を見てきた大下住職は、どう考えるのか。(小野木康雄)

 働くことは修行

 〈政府は今年4月から、残業時間の罰則付き上限規制や有給休暇の消化義務などを導入する。いずれも昨年成立した働き方改革関連法に盛り込まれた〉

 --働き方改革に対する考えを聞かせてください

 「制度も諸行無常です。年功序列や終身雇用が常識だった昭和から、能力主義の平成になり、働きすぎを防ぐ新たな時代を迎えるわけですから。今はベストな改革だと思えても、後から検証すると良くなかったということはあり得るでしょう。問題があれば変えればいい。とりあえずやってみることです。もちろん、過労死などの不幸を作ってはいけませんが」

 --そもそも仏教は働くことをどう考えていますか

 「仏教の生活実践である八正道(はっしょうどう)のひとつに、正業(しょうごう)と呼ばれる修行があります。意味は『正しい行い』。仕事を給料のためだけでなく、魂を磨く行為だと位置づけています。嫌な仕事でも自分を高めるかもしれないと考えるのです」

 --行基や空海は、治水や灌漑(かんがい)などの土木事業を率先して行いました。現代の僧侶は、働くことを通じてどのように修行しているのでしょうか

 「妻帯しなかった昔と違って、今の僧侶は家族を養う必要があるので、他人を幸せにする利他行(りたぎょう)に力を注ぎにくくなったといえます」

労働でもあり、修行でもある