視点

就業者2040年推計 世代ごとの役割を明確に (1/2ページ)

 高齢者人口がピークに近づく2040年の就業者数は、経済が成長せず、高齢者や女性などの労働参加も進まなければ、17年に比べて1285万人少ない5245万人に落ち込む。(産経新聞論説委員・河合雅司)

 厚生労働省が公表した推計だ。率に換算すれば19.7%の大幅下落となる。政府が40年の就業者数を試算したのは初めてである。

 少子高齢化が進むためだ。人手不足といえば景気動向が大きく影響してきたが、人口減少が要因では容易に状況は改善しない。今後、多くの分野で人手不足が続くことになるだろう。推計は、経済が成長し、高齢者や女性などの労働参加が進んだ場合の就業者数が6024万人となり500万人程度の減少にとどまるともしている。

 これらの数値だけを比較すれば「高齢者や女性の就労促進をさらに強化しなければならない」となる。もちろん、働く意欲がありながら機会に恵まれない人は少なくなく、状況の改善は急務である。

 だが、話はそう単純でない。この「労働参加が進む」というシナリオは注意が必要だ。就業者予測を5歳区分で見てみよう。男性は59歳以下、女性は54歳以下のすべての年代で減少する見込みとなっている。

 男女の総計でチェックすると、70歳以上の高齢者の就業が17年の364万人から232万人増えて596万人になる。一方で30代、40代の働き盛り世代は2855万人だったのが2166万人へと689万人減る。

 高齢者の労働参加が進んだとしても、若者の就業数は現在の水準のまま維持されるわけではない。当然のことながら、少子化で年々出生数が減っている分、若い働き手ほど減っていくということだ。増加に期待のかかる高齢者の就業についても、これからの「高齢者」とはどういう人たちなのか、実態を把握しなければならない。

 厚労省は、70歳以上が232万人も増えると織り込んでいる。とりわけ、75歳以上が157万人から287万人へと1.8倍増になることを前提にしているのだ。

 ただ、いくら高齢者の肉体面での能力がかつてと比べて“若くなった”とはいえ、75歳を超えると若い頃のようにはいかなくなろう。若い人でなければできない仕事もあれば、年配者のほうが適した業務もある。年齢を考慮せず、人数の増減だけを追いかけたのでは、実態は理解できない。

 例えば、厚労省がほとんどの業種について就業者を減少か横ばいと予想する中で、大きく伸びると指摘した「医療・福祉」分野だ。経済が成長し、高齢者や女性などの労働参加が進めば167万人増、進まないケースでも103万人増を見込んでいる。高齢社会で需要は拡大し続ける。就業が進まなければ社会全体が大きく揺らぐことにもなりかねない。

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