直売率99%、栃木の農園が経営改善のノウハウを無償で公開し続ける理由 (1/6ページ)

 “農家の業務改革”の好例として注目を集めている、栃木県にある梨農園「阿部梨園」。畑に入らず、業務改善を続けるマネージャーの佐川友彦さんは、東京大学を卒業し、化学メーカーのデュポン、立ち上げ期のメルカリを経て、阿部梨園にジョインしたという珍しいキャリアを持つ。

 (前編「東大卒→デュポン→メルカリ、そして梨農園 「畑に入らない農家の右腕」の正体」は昨日3月23日に配信しています)

 事務所の掃除といった小さなことから、作業場の導線改善など、4カ月のインターンで70近くの業務改善を行った佐川さんは、晴れて“正社員”になった。それからは、梨園のオーナーである阿部さんへ詳しいヒアリングを重ねながら、会計関連の見直しや、従業員の待遇改善に手を付けていった。

阿部梨園の梨はソフトボールよりも大きく、ずっしりとした重みがある。贈答用の高級品として人気が高い

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 農家にも、一般企業並みの「福利厚生」を

 「一般的な会社にあるような、いろいろなものがなかったんです。例えば給与明細。手書きで金額が書かれた封筒を手渡し、というのが農家では割と普通なんです。雇用保険もそうですね。事業としても問題ですし、『何より自分が入っていないとまずいな』というのもあり、予算の確保も含めて進めていきました」(佐川さん)

 翌年には、厚生年金や健康保険といった制度も導入。利益の伸びに合わせ、少しずつ福利厚生を増やしていった。他の農園と比べてもそれがアドバンテージになったこともあり、仕組みの変化をスタッフが楽しんでくれたという。農園に対するオーダーやアイデアを共有するためのミーティングも始めた。すると、より一層、要望が活発に出てくるようになり、チームとしての一体感も増したそうだ。

 「阿部は優しい性格で、スタッフみんなをポジティブに励ますタイプだったので、それに対して、僕がちゃんと筋道などを見せられると、すんなりと乗ってもらえる流れはあったと思います。逆に僕だけだと、ちょっとドライ過ぎる点があったかもしれませんね」(佐川さん)

「これまではお金の使い方がやや雑だった」