社会・その他

諫早開門認めぬ判決が確定 最高裁、開門の是非めぐり初の決定

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)をめぐり、潮受け堤防閉め切りで深刻な漁業不振になったとして、諫早湾や周辺の漁業者らが国に堤防排水門の開門と損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は漁業者ら23人の上告を棄却する決定をした。開門を認めず、損害賠償も退けた2審判決が確定した。開門の是非を正面から争う訴訟が最高裁で確定したのは初めてとみられる。決定は26日付。4裁判官全員一致の結論。

 同種訴訟では、福岡高裁が平成22年12月、漁業被害を認め、5年間の常時開門を命じている。菅直人首相(当時)が上告しない政治判断をしたことで判決が確定。開門期限直前の25年11月には、長崎地裁が開門差し止めの仮処分決定をしており、国は相反する2つの法的義務を負っている。

 国が漁業者に潮受け堤防排水門の開門を強制しないよう求めた請求異議訴訟の上告審は、7月26日に弁論が開かれる予定。今回の訴訟が最高裁で確定しても国の開門義務は消えず、司法判断の「ねじれ」は続くことになる。

 開門の是非を正面から争った今回の訴訟をめぐっては、23年6月の1審長崎地裁判決が「権利侵害の程度が大きいといえないが、コノシロなど一部魚種で環境悪化が認められる」と指摘。潮受け堤防の営農・防災面への効果も認めて開門請求は棄却した一方、漁業補償を受けていない漁業者16人について国に計約1億1千万円の賠償を命じた。

 一方、2審福岡高裁は27年9月、「原告が主張する漁業被害と開門しないこととの因果関係は認められない」と判断。原告が主張した漁業被害のうち、タイラギ、アサリ漁への被害は認定し「漁場環境の悪化は間違いない。諫早干拓によって赤潮発生が促進された可能性もある」としつつ「環境悪化が開門しないことに起因すると立証されていない」と結論付けていた。

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