主張

副業の時間管理 多様な層に目配り必要だ

 政府が副業や兼業推進の旗を振る中、そのあり方が課題になっている。本業と合わせ労働時間をどう適切に管理し普及させるか、厚生労働省の有識者検討会は複数の選択肢を挙げた。

 能力を発揮する場が広がる一方で、本業の所得を補うため複数の仕事を掛け持ちする現実もある。多様な働き方を踏まえた目配りが必要だ。

 企業などで働く人は副業や兼業が禁止されているケースが多いが、厚労省は昨年、各社が就業規則を作る際にひな型にする「モデル就業規則」を変更し、推進にかじを切った。事前に届け出をすることで、勤務時間外に別の会社の業務に携われるとの内容だ。

 背景には、人口が減少するなかで人材を有効活用する狙いがある。地方での人材確保にも寄与し、当人が異業種で人脈を広げ、経験を積めば事業主にもメリットがある。新たな発想が生まれ技術革新が進むかもしれない。

 しかし、8割以上の企業が副業や兼業を認めていない。現行制度では、労働者が本業で働いた時間と、副業で働いた時間を、事業主が通算して把握することになっている。時間外労働や健康の管理のためだ。しかし、徹底が難しく、業務が煩雑になることが、普及の障害になっているとされる。

 検討会が示した選択肢の一つは、当人が副業の労働時間を申告し、事業主が月単位などで時間を管理する案だ。また事業主ごとに上限規制を適用し、副業は厳密な規制対象にしない案もある。

 副業や兼業の働く実態はさまざまだ。実際に副業を持つ人の割合を、本業の所得階層別に見ると、所得が1千万円以上の層と199万円以下の層で高い。長時間労働を是正する働き方改革の一方で、副業解禁により所得が低く仕事を掛け持ちせざるを得ない人たちにしわ寄せがいくようでは困る。

 複数の職場に属し、実質的にフルタイムで働きながら、厚生年金や被用者を対象にした健康保険から外れてしまう人もいる。こうした労働者を増やす結果になっては本来の趣旨に反する。

 秋以降、労働政策審議会での議論を経て法改正が検討される。知識・技術のある人が能力を発揮できる環境を整えるのはもちろん、やむにやまれず複数の職場で働く人の環境をどう整えるかも、真剣に考えてもらいたい。

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