書評

『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』高山羽根子・著

 ■世界を形作る小さく尊いもの

 心に傷を抱えたまま大人になった主人公の「私」はある日、雨宿りに立ち寄った店でSNSにアップする東京の記録を撮りためている女性と出会う。彼女が東京でのデモの様子をとらえた映像に映っていたのは、「私」の高校時代の男友達の成長した姿だった…。

 美しくて「エロい」背中をしていたおばあちゃん、下手なギターを弾き鳴らしていた大学生、初めて遭遇した電車の人身事故…。「私」の幼少期からの断片的な回想を軸にした中編小説は、この多様な世界を形作っていく小さくとも尊いものをイメージ豊かに描き出す。第161回芥川賞候補作。(集英社、1300円+税)

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