書評

『殺しの柳川 日韓戦後秘史』竹中明洋・著

 ■日韓対立解消に暗躍した半生

 柳川次郎、本名を梁元●(ヤン・ウォンソク)。戦前の釜山に生まれて幼くして大阪に渡り、戦後の混乱期に裏社会で台頭。昭和30年代には山口組内の武闘派「柳川組」を率いた伝説的な在日ヤクザだ。だが柳川組が44年に解散した後は仁侠(にんきょう)の世界から一線を退き、反共やアジア主義に基づく日韓連帯を唱え、まだ弱かった祖国韓国を陰から支援する活動に没頭した。その知られざる後半生を描いたノンフィクションだ。当時の韓国要人と太いパイプを持つ柳川は、日本の政治家とも人脈を築き、両国間の対立解消に暗躍した。日韓対立が決定的になった今、こうした人物の不在に思いが至る。(小学館、1750円+税)

●=金へんに場のつくり

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