社会・その他

証券会社が取引所のシェアを奪う? 実は超競争業界の「証券取引所」 (1/2ページ)

 金融業界を志す就活生や転職組で、知る人ぞ知る人気業界が、金融商品取引所といったマーケットインフラ業界だ。

 株式などの取引所でいえば、日本取引所グループ傘下の東証一強といっても差し支えないのが日本の状況だ。金融商品取引所は参入障壁が極めて高いという事情もある。そのため、日本取引所グループは競争がなく、安定しているという見方をする者も少なからず存在する。

 しかし、日本取引所グループも決して安定しているとはいえない。それは、証券会社との競争と取引所間の競争が激化しているためだ。まずは証券会社と東証のシェア争いについて見てみよう。

 証券会社のPTS(私設取引所)が東証のシェアを削る

 一見、金融商品取引所と証券会社は、プラットフォーマーと利用者のような関係性で、競争関係にないと思われるかもしれない。しかし、近年では証券会社が独自で、取引所に近い性質を持つプラットフォームを展開し、東証とシェア争いが始まっている点に注意が必要だ。

 比較的なじみが深い証券会社の取引所といえば、PTS(私設取引所)市場だろう。これは、1998年12月の証券取引法改正によって解禁された取引市場だ。これまでは取引所集中義務という原則があり、売買は東証に集中されていたが、PTSは、新たな取引市場形態として認められたものだ。

 今年の8月には、信用取引も解禁されるなど、個人投資家にとってのPTSの利便性が非常に高まっている。PTSを運営するSBIグループのジャパンネクストが、19年10月に発表した月間の売買代金は2兆9546億円にのぼり、史上最高を更新した。

 かつては野村系で、現在は米ファンドJCフラワーズが運営するPTS、チャイエックス・ジャパンの月間売買代金は1兆1707億円で、こちらも史上最高水準で推移している。両社の合計売買代金は実に4兆1343億円にもなる。これは、東証の19年10月における合計売買代金61兆6640億円に対し、約6.7%のシェアとなり、決して無視できないレベルの台頭ぶりといえるだろう。

 20年には楽天証券・マネックス証券が、PTS取引に信用取引を導入する見通しだ。カブドットコム証券も時期は明らかにしていないものの、PTS取引における信用取引の導入を検討している。PTS取引では、売買時間などが日本取引所グループの取り決めにとらわれない。そのため、夜間取引や取引手数料の低下という観点で、個人投資家にとってのメリットも多く、シェアを高めている状況だ。

 機関投資家のダークプール利用も増加

 東証と証券会社の売買シェア争いは、個人投資家との関係だけでなく、機関投資家との関係にもある。機関投資家に利用されているのは、主に証券会社が運営するダークプールだ。日本におけるダークプールは、PTS取引とはまた別の市場として規制されており、私たちが思い描く通常の取引とは大きく異なる性質を持つ。

 まず、ダークプールの名前の由来でもあり、最大の特徴として挙げられるのが、「気配情報や板情報が非公表になっている」ということだ。つまり、どの価格にどれだけの注文が入っているかは実際に注文を出してみないと分からない。これだけをみると、意図した価格・数量で取引できないというデメリットがハイライトされやすいが、機関投資家にとってこれはむしろ都合がいい。

 一般に、機関投資家が売買する株式の金額は、10億円~数百億円にものぼることがある。仮に、この取引を東証といった取引情報が公開される市場で売買すれば、機関投資家にとって不都合な点がある。それは、意図した価格で一定の数量を買い付ける前に、ほかの市場参加者に取引意図を察知されてしまうことだ。

 流動性にもよるが、十億円~数百億円単位の売買をさばくには数日以上かかる場合もある。その間に、ほかの投資家に取引の意図がばれてしまうことがあるのだ。ほかの市場参加者は、機関投資家の安定した買いを後ろ盾として積極的に買いに転じ、予定した株数を調達する前に株価を大きく上昇させてしまう。買いの場合はまだ取引を中断するという選択肢があるが、売り切らなければならない場合はより大変だ。

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