転職・起業

賃金が下がっても…転職市場の主役はなぜ若者から中高年に変わったのか (2/3ページ)

 社会人が企業に勤めながら、能力を高めるための方法としては大きく3つある。一つは、OJT(On-the-Job Training、職場内訓練)である。若手社員が職場の先輩や上司から実務を通じてスキル・能力・知識などを身につける教育訓練の方法で、日本の企業においては、この「OJT」が社員の能力開発・向上の中心的な手法となっている。

 第二が、Off-JT(職場外での教育訓練)で、実務と切り離して行う教育訓練である。階層別研修、スキル研修、資格取得研修などがあり、業務上では体系的に学べない知識やスキルを獲得するために用いられ、OJTを補完する役割を果たしている。

 最後が自己学習(一般には「自己啓発」と呼ばれているが、知識やスキルの獲得を含め広い意味合いとするため、ここでは「自己学習」とする。)である。社員自身が自らの意図で行うものであり、人材育成計画におけるプログラムメニューの対象外となっている場合が多い。明確な役割が期待されておらず、教育訓練手法としての企業による位置づけは低い。

 企業の自己学習支援は極めて手薄

 しかし、転職を考えたとき、「自己学習」こそが、最も効果的な能力向上の手法であると筆者は考える。なぜなら、OJTは所属している企業特有のスキル等は身につけやすいが、他社で役立つスキルは必ずしも身につけられないこと、Off‐JTは表面的な知識やスキルは身につけられても、実践力を身につけるには十分でない場合が多いためである。

 これらに対し、自己学習は当人が自身の強みとするコアの能力を自覚した上で、これに追加するのに適した能力を身につけることができる。10年前には書籍からの学び、資格取得講座の受講など、自己学習の手法は少なく学習効果は限定的であったが、近年はeラーニング、副業、サロン形式の勉強会など、バリエーションが広がってきており、複数の手法を組み合わせることで、知識やスキル、ノウハウなどを効率的に獲得しやすくなっている。

 自己学習に対する就業者のニーズは極めて高い。既存調査(※2)によると、社員が能力開発に投入している総時間(平均で一人当たり年間47.9時間)の約6割を自己学習(自己啓発)に投じているとともに、社員の半数程度(49.8%)が研修や自己啓発の時間を増やしたいと回答している。

 ところが、企業が社員の自己学習に対して行う支援は極めて手薄である。7割以上の企業が自己学習支援に対する支出を行っておらず、社員一人当たりの支出額は、年間平均3000円(2018年度)と少なく、かつ、過去4年間では低下基調(6000円→5000円→4000円→3000円)にある(※3)。これは自己学習の範囲を厳密に規定するのが難しい上、社員自身がその内容を選択することから、自己学習支援に対する企業のメリットが分かりにくいためと考えられる。

 (※2)「教育訓練サービス市場の需要構造に関する調査研究」(独立行政法人労働政策研究・研修機構、2006年)

 (※3)「平成30年度能力開発基本調査」(厚生労働省、2018年)

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