転職・起業

賃金が下がっても…転職市場の主役はなぜ若者から中高年に変わったのか (3/3ページ)

 能力を高める上でどんな自己学習が効果的か

 ところで、中高年層はどのような自己学習を行っているのだろうか。三菱総合研究所の保有するデータ(※4)によると、40代以降の正社員が行っている自己学習は、書籍による学習の他、講演会への参加、オンライン講座、講師としての学習支援など多岐にわたっている。

 今回、このデータを用いて順序ロジスティック回帰分析を行い、自己の能力向上につながる可能性の高い自己学習のメニューを抽出してみた。目的変数を「自己の能力の発揮満足度」、説明変数を自己学習のメニューにして分析してみると、40代では「講演会への参加を通して学習する」「有志や仲間による自主的な勉強会を行う」「早朝の時間を利用して学習する」「パソコンや携帯電話等で電子書籍を読む」、50代では「講演会への参加を通して学習する」「有志や仲間による自主的な勉強会を行う」、60代では「テレビやラジオの学習番組を通して学習する」が有意にプラスとなった。

 中高年層と一口に言っても、年代によって効果的な自己学習の方法は異なる可能性があるということが分かる。なお、この結果は能力発揮満足度と相関の高い自己学習の方法を分析したにすぎず、因果関係を説明したことにはならない点に留意する必要がある。

 能力発揮満足度と特に関係の深い自己学習の方法として、ここでは40代と50代に共通している「講演会参加」と「自主的な勉強会」に着目してみたい。「講演会参加」については、いつどのような講演会が開催されているのかを常時、チェックしておかなければならず、常に情報感度を高めてアンテナを張ることのできる情報収集力が必要となる。

 (※4)三菱総合研究所の「生活者市場予測システム」。2011年から毎年6月に設問総数約2000問、20歳から69歳を対象として日本の縮図となるような3万人を対象に実施している生活者調査。

 「自主的な勉強会」については、勉強会を企画し、講師を連れてくるといった実行力が必要となる。適切な講師を見つけて関係を築いたり、勉強会のメンバーを集めるためにはネットワーク構築力も不可欠である。このような自己学習活動には強い主体性が求められるため、ここに挙げた能力以前に、「自己の能力を高めたい」との強い意欲を持っていることが活動の前提といえる。

 40代後半以降の就業者にとって、最大の転職動機は「自分の能力をより発揮できる場所に移りたい」という点である。この世代は転職前より転職後の方が、賃金が低下する傾向にあるものの、転職後の満足度は決して低くない。つまり能力発揮の満足度が高ければ、転職はおおむね成功したと言えるだろう。

 転職を成功させるために重要な3つの能力

 このような観点を踏まえると、転職を成功させるために重要な能力とは「情報収集力」「実行力」「ネットワーク構築力」の3つであり、それ以前に不可欠なのは、「主体性を持って自己の能力を高めようとするマインド」と考える。

 能力を高めることは何も転職につながるだけではなく、企業の中でもう一段、活躍していくためにも有効である。人生100年時代、就業期間はますます長くなっていく。ベストセラー『ライフ・シフト』の著者リンダ・グラットンは80歳まで働かないと、生計が成り立たなくなる可能性を示唆している。おそらく残念ながら、悠々自適の余生は今後は望みにくいだろう。今、私たち中高年ビジネスパーソンに求められているのは、自分自身に設定している「限界」を取り払うことではないだろうか。

奥村 隆一(おくむら・りゅういち) 三菱総合研究所主席研究員
 早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻、修士課程修了。1994年4月、三菱総合研究所入社。一級建築士。東京都市大学講師(非常勤)。プラチナ社会センターに所属し、少子高齢問題、雇用・労働問題、地方自治政策に関わる研究を行う。著書に『仕事が速い人は図で考える』(KADOKAWA)、『考えをまとめる・伝える図解の技術』(日本経済新聞出版社)、『図解 人口減少経済 早わかり』(中経出版)、などがある。

 (三菱総合研究所主席研究員 奥村 隆一)(PRESIDENT Online)

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