働き方

その“IT武装”は本当に必要? Excelだけで、大体のマネジメントはうまくいく (1/3ページ)

 働き方改革上の必要性に駆られて、BIツールを中心としたITツールを導入する企業も多いだろう。しかし、当然のことながらツールを導入しただけでは業務改革を成し遂げることはできない。企業の中には、過剰なまでに不必要な“IT武装”をしてしまっているところも多い。企業の現場に自ら入り込み、目標を「絶対達成」させるコンサルタントの横山信弘氏が「IT武装」問題に切り込む。

 その“IT武装”、本当に必要?

 私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。結果を出すための相談を経営者からよく受ける。しかし最近は、残念な相談も増えている。2カ月前にセミナーで知り合った社長から受けた相談は、特に残念だった。

 「ビッグデータで顧客情報を分析し、営業活動を見える化することで、もっと営業の生産性がアップするはずだ。さらに、貢献度の高い社員の動きをAIでパターン分析すれば、公正な評価ができる。どう思うか」

 私はしばらく黙って、どう返答しようか悩んだ。

 カタチから入るのは悪くはない。私も昔、二輪車の免許を取得した後、3年間貯めたバイト代をはたいて買ったバイクは、当時流行していた「レーサーレプリカ」というタイプだった。プロのレーサーが乗っているバイクを模したもので、免許を取得したばかりの初心者が乗るようなモデルではない。

 「初心者のクセに、レーサーレプリカなんか買いやがって」

 と友人から嫌みを言われたが、とはいえ自分で稼いだお金だ。何に使っても構わないだろうと私は言い返した。

 しかし、経営は個人の趣味でやってはならない。特に多額のコストがかかる投資は、慎重にすべきだ。

 「そのように“IT武装”しようとしても、いつ運用を本格スタートできるか分かりませんよ」

 そう私は返した。すると、

 「そうなの?」

 と社長が言うので、あきれてしまった。「オフィスに空気清浄機を設置するわけじゃないんだから、もっと慎重になってくださいよ」と突っ込みそうになった。経営の視点で考える場合、「コスト」はお金だけではない。時間も、労力も、コストとしてしっかり計上すべきなのだ。

 「断言します。マネジメントのためなら、Excelだけで十分ですよ」

 「え、Excel? Excelって、あの表計算ソフトの?」

 「そうです。Excelだけで、9割はうまくいきます」

 買い物に「戦車」で行くか?

 経営指標を見える化するために、人工知能(AI)やビッグデータを活用しようとする企業が増えている。

 以前、AIの力を借りて、営業部門のベストプラクティス分析をしたいと、ある営業部長が言ってきた。最も成績のいい営業社員のトーク、行動、振る舞いなどを画像や音声認識機能を使ってデータ収集、蓄積し、そのパフォーマンスを分析したいとのことだった。伸び悩む営業社員の指導に生かすためだと言う。

 私は止めたが、なんとその会社は、多額のシステム構築費用をはたいてツールを導入した。しかし、営業部の思惑をうまくパラメータ設計に反映できないなどの理由で手間取っているらしい。導入から半年近くが経過した今も、まだ運用段階に入っていない。

 私から言わせてもらえば、AIの力を借りて営業マネジメントの精度を上げようだなんて、正直なところ、近所のスーパーへ買い物に行くのに戦車を使うようなものだと言いたい。オーバースペック過ぎて、逆にマネジメント効率が悪くなる。

 マネジメントの目的は、「組織目標を達成すること」である。当たり前だが、「マネジメントすること」がゴールではない。だからこそ「手段を目的化」する思想は、痛々しく見える。

 「値」ではなく「算式」に着目せよ

 マネジメントがしっかり機能するためには、それこそシンプルであれば、シンプルであるほどいい。これは鉄則だ。また、意識すべき重要指標の「値」ではなく、その根拠となる「算式」を頭に入れておく必要がある。

 例えば、営業利益であれば、

 営業利益=「売上高」-「売上原価」-「販売費および一般管理費」

 このような算式が頭に入っていないと、営業利益を上げるにはどうすればいいのか、瞬時に思い浮かばないだろう。

 やたらと時短だ、時短だ、と言っているマネジャーは、単に労働時間を減らせば生産性向上につながると思い込んでいる。ただ、実際は生産性の「算式」が頭に入っていないと、何をどうすればいいのか理解できないのだ。

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