働き方

優秀な社員ほど流出する会社は「ジャニーズ事務所」と同じだ (2/3ページ)

 その他にも元KAT-TUNの赤西仁に億単位の収入があると報じられたり、元関ジャニ∞の錦戸亮が再始動後に順調な滑り出しを見せたりと、話題には事欠かない。ジャニーズに絡む話題としては、2020年をもって活動休止となる嵐の動向も注目されているところだが、このままいくとジャニーズは「超絶優秀な人材育成機関、かつ抜群の売り込み力とタレントブランディング力を備えたプロ集団」といった様相を強めていくのかもしれない。そうなると、入所前からすでに独立後のことまで視野に入れつつジャニーズに所属し、芸能人としてのキャリアプランを長いスパンで考えるような人まで出てきてもおかしくはないだろう。

 YouTuberにオンラインサロン…芸能人が稼ぐ方法も増えた

 事務所に属していないと芸能活動もままならず、下手に独立しても仕事は先細っていくばかりで、結局、自分のやりたいことなんてできない--かつては、確かにそういうものだったのかもしれない。

 ただ、いまの時代はなにしろインターネットが存在する。すでにある程度の知名度を得ている芸能人であれば、ブログをまめに更新して広告費を稼いでもいいし、YouTuberとして好きな企画を自分のやりたいように表現しながら稼ぐ方法もある。今年2月1日のYouTubeチャンネル開設から、わずか9日で100万登録を達成した江頭2:50がその好例といえよう。ファンクラブやオンラインサロン、ファンミーティング、クラウドファンディングなど、自分を応援してくれる人と直接向き合いながらカネを稼ぐ手段の選択肢も増えた。

 もちろん皆が皆、独立して成功するわけではない。ただ、ネットの普及、SNSの進化などに伴って、稼ぎ方の幅が広がったのは間違いない。芸能人が古巣の事務所を離れて、最低限のマネジメント業務をしてくれる人物に月額35万~50万円ほどを支払い、自分は月に1000万円以上の手取りを獲得する……なんてことも決して夢物語ではないのだ。

 芸能人事務所の待遇改善策から学べること

 組織から有能な人材が流出してしまう動きを阻むには、待遇を上げるしかないのだが、果たして芸能事務所にそれができるのか。最近はコンプライアンスの観点に加えて、ネットで暴露されるリスクを軽減する意味でも、つい昔からの慣習で「オマエ、独立したら干してやるからな」といったパワハラ発言などは、決して口にできない状況になった。そうした意識の変革は、他の業種業態ではもう何年も前から当たり前のことになっていたわけだが、ついに芸能界もその大波に飲み込まれ始めた、と見てもいいだろう。

 ここで私が強調したいのは「これから芸能界の待遇改善がどうなっていくのか、ビジネスパーソン諸氏は注視しておくほうがいい」ということだ。冒頭で紹介した吉本興業の「ギャラ5万円までの直営業は黙認」も、ひとつの参考事例になる。

 なぜ芸能事務所の待遇改善について、その動向をチェックしておくべきなのか。それは、芸能事務所以外の組織においても、人材の流出阻止策として応用できるなど、非常に参考になる部分が多いと考えるからだ。たとえば、広告業界のクリエイターやIT業界のプログラマーといった世界では、スター社員ともいうべき優秀な人材が独立を決断して、会社から離れていくような場面がよくある。会社にとって、こうした独立は大損失だ。

 優秀な社員の流出を抑えるために

 いかにすればスター社員たちがより長く会社に在籍してくれるのか。そうしたことを考えるのは、全社的な人材育成や待遇改善を検討することにもつながってくる。

 もちろん、独立の意志を強く持った人材を確実に引き留められる方法などは存在しない。だが、彼らに少しでも長く在籍してもらうために、また、残った社員のモチベーションを下げないために、どんな取り組みが有効なのか、さまざまな側面から考えることはできるはずだ。

 人材の流動性が高まるばかりの時代にあって、芸能事務所の待遇改善は、人事担当者に多少なりともヒントを与えてくれるのではなかろうか。

 「独立すれば、いまの10倍稼げるかもしれない」

 広告業界の話に限定するが、エースと呼ばれるようなクリエイターやプランナーは、大切な競合プレゼンに駆り出され、それで勝利しようものならば社内外で高い名声を獲得する。大型予算を使った派手な企画を手掛ければ、「あのような企画をウチでもやってみたい」とまねされたりして、ますますその人物の名声は高まっていく。

 そうしてエースの心のなかで膨らみだすのが「ここまで評価してもらっているのだから、独立すれば自分も1億円プレーヤーになれるのでは」「そろそろ、この会社を出てもいいのかもしれない」といった考えだ。いまの組織人としての年収が1000万円であったとしたら、それが10倍に膨れ上がる計算だ。これは大きなモチベーションになる。

 「いま自分は35歳。会社に残れば、役員にはなれるかもしれない。そうなると年間数千万円の役員報酬は得られるが、早くても40代後半~50代前半になってからだろう。30代のうちに1億円プレーヤーになれる可能性があるのに、これをみすみす棒に振ってもいいのか……」

 そう葛藤するようになったら、もう止まらない。もはやこの人のなかでは「南青山のカッコいいオフィスでクリエイティブな仕事を楽しみながらこなす、オレと素敵(すてき)な仲間たち」といったイメージができあがりつつある。独立した諸先輩のキラキラした交友関係や手掛けた大きな仕事などを見てきただけに、こうした憧れを抱くのは自然なことだ。そしてまた、優秀な人材が1人、会社を離れていくのである。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus