働き方

失業予備軍がコロナで急増 休業者600万人、危機的水準に

 5月29日に発表された4月の雇用統計によると、パートやアルバイトなど非正規労働者は2019万人となり、前年同月比で97万人減った。比較可能な2014年1月以降で下落幅は過去最大だ。新型コロナウイルス感染拡大による悪化が鮮明となった。一時的に仕事を休む休業者は約600万人に膨らみ、働く人の1割近い危機的な水準。有識者は「今後、かなりの部分が失業者に転じる可能性が高い」と“失業予備軍”の急増に警鐘を鳴らした。

 「仕事はすぐ見つかると思ったが甘かった」。元派遣社員の男性(46)はうつむいた。4月1日に派遣会社から解雇を告げられ、社員寮に住んでいたために4月末の解雇と同時に住まいも失った。宮城県出身で東日本大震災で被災し、横浜市に移住。簡易宿泊所で生活保護の支給を待つ。

 全財産は4万円…

 求人サイトから住居付きの仕事に次々と申し込んだが不採用。「感染者が多い神奈川の人はちょっと…」「車通勤できない人は感染リスクが高い」など、いずれも新型コロナが理由だ。

 住所が定まらないので10万円の特別定額給付金も申請できない。全財産は4万円を切った。「選んでいられない。とにかく職を手にしないと」と焦りは強い。

 「家族が心配しているので仕事を見つけたいが、気力が湧かない」とため息をつくのは、民間学童保育の責任者だった女性(57)=横浜市。勤め先は3月中旬、新型コロナの影響で突然閉校になり解雇通告され現在休業中。「会社は雇用に責任を持つべきだ」と憤った。

 厳しい雇用情勢

 「雇用情勢が厳しい状況になってきている」。加藤勝信厚生労働相は5月29日の記者会見で、休業者の急増に警戒感を示した。統計上は就業者だが「ただちに失業に転じていない」(高市早苗総務相)だけで、勤務先が倒産したり事業縮小したりすれば失業に直面するからだ。

 「休業者がここまで増えるとは思わなかった」と、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長は驚く。失業しても就職活動をせず自宅待機している“隠れ失業”の人もいるとみられるが、統計には計上されない。「今回の失業率悪化は小幅だが過小評価しない方がいい」と指摘。年末には4%程度まで大幅悪化すると予想する。

 4月の有効求人倍率が1倍を切った沖縄県。沖縄労働局によると、自粛要請が宿泊業や飲食サービス業、小売業を直撃した。担当者は「観光業は沖縄の主要産業だが、5月の大型連休も伸びなかったようだ」と先行きの厳しさをうかがわせる。

 厚労省によると、コロナ関連の解雇・雇い止めは5月28日時点で1万5823人。4月末までの約4倍だ。政府は緊急経済対策で雇用対策を打ち出したが歯止めはかからない。斎藤氏は「雇用調整助成金や持続化給付金といった今ある対策を迅速に実行することに注力するべきだ」と指摘した。

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