雇用情勢の悪化が本格化してきた。厚生労働省がまとめた新型コロナウイルスの感染拡大に関連した解雇や雇い止めは、見込み人数も含めて2万人を突破した。わずか半月で倍増した格好だ。
店舗の休業などで踏みとどまっていた非正規社員の解雇や雇い止めが今後、急増する恐れがある。政府は失業防止に向けた対策を急がねばならない。
産業界も失業者の発生を抑える取り組みを強めるべきだ。スーパーなど一部の企業では他業種で働いていた人たちを雇い入れる動きもある。官民連携による円滑な労働移動が必要だ。政府も積極的に後押ししてほしい。
厚労省が全国の労働局を通じて集計したところ、新型ウイルスの影響で失業した人は、今月5日時点で見込みを含めて2万933人にのぼった。5月下旬からの半月で約1万人も増えており、雇用情勢が急激に悪化しつつある実態が浮き彫りになった。
宿泊業や飲食業で働く非正規社員の失業が目立つという。こうした業種では休業要請が解除されても利用者の戻りが遅く、これから廃業や店舗の閉鎖が相次ぐ恐れがある。今月末以降に契約満了で失業が本格化する懸念があり、失業者の増加をできる限り減らすための対策が急務である。
国会で審議中の令和2年度第2次補正予算案では、企業が従業員を解雇せず、休業にとどめた場合に支払う雇用調整助成金の日額上限を引き上げた。手続きの簡素化を含めてコロナ失業の防止に全力を挙げてほしい。
また、補正予算案には新型ウイルスの影響で休業させられたにもかかわらず、休業手当が支払われなかった中小企業で働く人に手当を直接支払う制度の創設も盛り込んだ。休業者の生活支援にも目配りが欠かせない。
産業界では来店客が急増しているスーパーが、休業した飲食店などで働いていた人を雇用する取り組みも広がりつつある。接客に慣れているだけに業務の親和性が高いという。物流業界なども深刻な人手不足に直面しており、こうした業種を雇用の受け皿として機能させたい。
地元の商工会議所などを通じ、働く人たちのマッチング(適合)を行う仕組みづくりも検討すべきだ。官民の取り組みを加速させて厳しい時代に備えたい。