働き方

保健所の新人保健師が新型コロナの対応に奮闘 「不安抱く市民のために」 (1/2ページ)

 新型コロナウイルス対策の最前線となる保健所で奮闘する新人保健師がいる。4月に大津市保健所に配属されたばかりの加藤日向子さん(23)。右も左も分からないまま、未知の感染症との戦いの中に身を置くことになった。非常時だけに手取り足取りの指導もない中、うまく業務をこなせず、落ち込むこともあったが、「不安を抱える市民のために自分にできることを」と懸命に仕事に取り組んだ。(花輪理徳)

 「保健室の先生」の姿にあこがれ、看護の道を選んだ。病院実習で「退院後の患者はどう過ごしているんだろう」と感じたことがきっかけで、現場に立つ看護師よりも広く地域で健康を見守る保健師を志した。

 念願の保健師になったものの、新型コロナウイルスの影響で採用前に職場を見学するオリエンテーションや集合研修は中止に。「通常通りも分からない中、イレギュラーばかりだった」という日々が始まった。

 配属されたのは、母子手帳の交付のほか、乳幼児の親子や妊婦向けの教室などを担当する健康推進課母性保健係。政府が進める妊婦向けの布マスクの配布の準備を任されたが、再検品などをめぐって二転三転する政府の方針に翻弄された。出産したり、新たに妊娠したりと、時期がずれると対象者も入れ替わるため、延期になるたびにリストを作り直す作業に追われた。

 コロナ対応のため、母性保健係は人事異動で正規職員4人のうち3人が入れ替わったばかりだったうえ、これまでに誰も経験したことのない業務。周りの先輩は自分の業務に精いっぱいで質問しにくく、指示されたホームページの更新や通知文の作成に四苦八苦した。

 配属から1週間後、感染の恐れのある市民からの電話相談を受け付ける帰国者・接触者相談センターの手伝いを任された。コロナ対策の最前線だが、市民と直接触れ合える現場に出てみたいと思っていただけに、「とてもうれしかった」。

 前日にマニュアルをもらって段取りを確認。「世間はどんな状況なのか勉強しよう」と考え、インターネットで調べてみると、保健所の対応への不満が多いことも分かり、不安になった。

 迎えた当日、先輩の保健師がすぐ近くで見守ってくれていたが、受話器を握る手が緊張でぶるぶると震えた。マニュアルに定められた項目を全て伝えようとするあまり、つい早口になってしまう場面もあった。

 「しんどい」と訴えたある相談者。受話器越しでも不安な様子が伝わってきた。熱も感染が疑われる症状もなかったため、PCR検査を断らざるを得なかった。

 「あの人は大丈夫だったのかな」と思うと、帰宅後も心配な気持ちになった。

 これまでにない厳しい環境の中で保健師としての第一歩を踏み出したが、「むしろ、よい勉強になった」と振り返る。妊婦向けのマスク発送業務が一段落し、本来の業務である子育て教室の企画に取り組むことができるようになった。余裕はないが、「これからも市民に寄り添った仕事をしていきたい」と前を向く。

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