働き方

欧州経済に迫り来る解雇の嵐 賃金補助期限、一部終了に身構える企業

 欧州は迫り来る解雇の嵐に身構えている。これまで新型コロナウイルスの影響で一時帰休となった従業員に対する賃金補助制度を利用して雇用を維持してきたものの、今後数カ月以内には一部の制度の期限が終了するためだ。

 経済活動が低迷する現状で制度を打ち切られれば企業による大量解雇が避けられず、欧州経済は「第2の衝撃波」に見舞われる恐れがある。

 900万人失業の恐れ

 ポルトガルでは7月末に制度の打ち切りを控えており、同国北西部の都市ブラガでレストランを経営するティアゴ・カルバーリョさんは戦々恐々としている。欧州全体の経済回復の鈍さを反映して客足が遠のく中、国の支援なしでは事業継続が困難だからだ。

 ポルトガル政府は8月以降、雇用を維持した企業への助成金を含む他の措置に移行する計画だが、現時点でその効果は未知数だ。カルバーリョさんは「現行の一時帰休制度を延長する必要がある。さもなければ、レストランは従業員を解雇しなければならないだろう」と訴える。

 欧州諸国は巨額を投じる景気対策の一環として政府補助による一時帰休制度を導入し、ロックダウン(都市封鎖)中に欧州の4500万人以上の雇用を保護してきた。だが、一部の制度は一時的な支援にとどまるため、問題解決を先延ばししているだけだとの見方もある。

 ドイツの保険大手アリアンツは6月のリポートで、一時帰休制度が終了すれば、欧州の900万人の利用者が2021年に失業する可能性があると指摘。英国の雇用主に対する調査では、英政府が一時帰休者への補助金の削減を開始した場合、利用者の4分の1が失業する可能性があるとしている。

 英中央銀行イングランド銀行(BOE)は助成金の恩恵を受ける一時帰休の労働者の多くが長期的に失業する可能性があると警告している。マービン・キング元BOE総裁は6月、英国の一時帰休制度は「国内総生産(GDP)が危機前と同等の水準に戻るまで維持すべきだ」と主張した。

 欧州諸国の多くでは今年の成長率が2桁台のマイナスに陥る可能性が大きく、ロックダウンによる経済への影響は4~6月期に最も深刻になる見通しだ。その後GDPが急回復することはほぼ確実であるものの、その効果が必ずしも継続するとは限らない。

 政府債務増大に懸念

 持続的な経済回復を支援するため、一部の国々は伝統的な刺激策に頼っている。ドイツ政府は経済の安定のために1兆2000億ユーロ(約145兆円)以上を既に支出しているが、6月には1300億ユーロ規模の新たな景気刺激策を発表した。

 ただ、ドイツがこうした大規模な支出計画を矢継ぎ早に打ち出せるのは、これまで数年にわたり財政黒字を継続できてきたという理由が大きい。ドイツのように健全財政を維持する国は欧州で異例であり、ほとんどは財政が圧迫されている。

 こうした中、欧州の主要機関に対し各国の財政負担を軽減するよう圧力がかかっている。欧州中央銀行(ECB)は政府の債務増大に対する投資家の懸念を和らげるため、大規模な債券買い入れ策を実施している。欧州連合(EU)も高債務国への支援として総額7500億ユーロの復興基金を提案した。

 このような支援策は欧州諸国に経済回復に向けた財政支出の拡大の余地を与える。イタリアは一時帰休制度を当初の14週間から18週間に延長し、夏の終わりまで労働者を保護する方針だ。さらに同国の今年の政府債務残高は対GDP比150%を超える見通しであるにもかかわらず、政府は100億ユーロの追加の景気刺激策を準備している。

 ただ、人々の暮らしがロックダウンによって一変した今、以前の「日常」を取り戻すのは容易でないことは明白だ。ポルトガル企業家連盟のアントニオ・サライバ代表は「雇用保障の必要性は7月以降もなくなることはない。国の政令によって今回の危機が収束したり、消費が回復したりすることはないからだ」と指摘した。(ブルームバーグ Joao Lima)

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