キャリア

MBA取得へ1600万円の投資が暗転 記者がコロナ禍で見たクラスメートの嘆き

 数年前、ブルームバーグの記者だった私は15万ドル(約1600万円)を投じて経営学修士(MBA)取得を目指すと決断した。世界一の金融記者になるために、ウォール街についての理解を深めることができるほか、いまだに白人男性中心の業界で出世するのに役立つと考えた。

 ニューヨーク大学スターン経営大学院のクラスメートたちは「UBSでディレクターに昇進する」「投資会社ベインのプログラムに入る」「非営利団体から転職する」などの目標を持っていた。ほぼ全員が、2020年5月には素晴らしいキャリアに向けた機会をつかみ、新しい、より良い人生に向かって船出しようとしているだろうと考えていた。

 ところが、新型コロナウイルスの流行で世界経済が急停止し、選択肢は数カ月の間に私たちの前から消えていった。新米MBAは、米企業がせっせと人員を減らしているさなかで仕事を探すことになった。クラスメートのエマル・ルステミは「教育に投資した15万ドルは300~400%のROI(投資利益率)をもたらすはずだったのに」と嘆く。

 クラスのメンバーの多くは移民で、就職に役立つような家族のコネもない。MBAの資格は良い職を得るための踏み石だと考えていた。

 ヌリエル・ルービニ、アスワス・ダモダラン、スコット・ギャロウェイといった教授陣による講義や授業の後で大学の地下で一緒に飲むビール、海外での事業について学ぶためのオーストラリアやテルアビブ、香港などへの旅行が、自分たちの人生を正しい軌道に乗せてくれると信じていた。

 15万ドルを使うというのはリスクだった。しかし、私は自身への投資の方が不動産を買うよりも大きなリターンを生むだろうと考えた。経営学修士課程入学審査協議会(GMAC)によれば、MBA課程修了者の初年度の平均年俸は19年に11万5000ドルと、学士号のみの卒業生の5万5000ドルの2倍強だった。

 しかも、ここ数年間は思い切って上を目指すことも危険でないように感じられた。学資ローンの金利は低かったし、失業率も低く、理論的には企業がこぞって私たちを採用し昇進させてくれるはずだった。私たちは皆、自信満々で、何でもできると思い込んでいた。

 今だったら大学院に行く決心などできなかっただろう。それでも、私は幸運だ。今でも仕事があって、ウォール街について記事を書いている。(ブルームバーグ Sonali Basak)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus