働き方

専門職新設でストレス軽減 動物園の飼育環境改善の取り組み

 飼育される動物にとっての幸せな環境を整え、ストレスを軽減させる「動物福祉」という考え方が、最近広まってきた。天王寺動物園(大阪市天王寺区)は昨年度から、その専門職「動物専門員」を新設。海外の飼育施設での勤務経験もある井出貴彦さん(34)が採用された。

 動物にストレスが溜まらない環境を知るため、飼育員と協力しながら日々の行動を観察する。「一番大切なのは動物の日常行動を知ること」との考えからだ。定期的な観察から、改善すべき点を見つけ出すことができるという。

 飼育環境の改善に、まず取り組んでいるのがウサギとサイ。ウサギに関しては観察の結果、気温が高くなると動きが鈍くなり、その変化が顕著になるのは22、23度であることが分かった。暑さ対策として、送風機の設置に加え、土がむき出しだった屋外の地面を雑草が生えるままにした。すると、草地で毛づくろいをしたり、えさを探したり、土を掘ったりと、行動量や行動パターンが増えた。

 発情期に入ったサイに関しては今のところ、観察のみを続けている。

 ウサギもサイも、週2回程度の観察日を設け、その日には10分間の観察を2回することを1年間続けてきた。週2回とはいえ、担当する動物の世話に追われる飼育員らには、それなりの負担。他の動物にも広げるには手が足りず、今年度からは、母校の専門学校の学生らに手伝ってもらっている。

 高校卒業後、動物と関わる仕事に就きたいと大阪ECO動物海洋専門学校(大阪市西区)の「動物園・動物飼育専攻」へ進学。「大学とどちらにするか迷いましたが、専門学校の方が就職の幅があると思い」選んだ。

 在学中、大きなインパクトを受けたのが、約3カ月にわたるオーストラリアでの海外研修。そのうち、保護施設を兼ねた動物園で飼育見習いを体験した約1カ月間で、特に多くの刺激を受けた。

 この動物園の展示は、カンガルーやウォンバットなど“地元”に生息する動物が中心。そのため、特別なケアが必要になるケースは少なく、飼育員は時間に縛られずに、のびのびと作業していた。細かくスケジュール管理される日本の飼育施設との違いに驚かされたという。

 卒業後3年間、静岡県の富士サファリパークに勤めたが、もう一度海外留学がしたくなり、オーストラリアを再訪。2年間滞在し、複数の現地施設で研鑽(けんさん)を積んだ。その後、神戸市立須磨海浜水族園で7年間勤務し、昨年度から天王寺動物園に移った。

 動物福祉については、実践だけでなく、来園者らに考え方を理解してもらうための「教育」も重要。しかし、「わざわざレクチャーの場を設けるのではなく、園内を歩いているだけで伝わるような展示設計をしていくべき」と考える。

 貧しい国や地域では、野生動物が生息できる環境の崩壊が進みがち。海外では近年、環境保全のために貧困問題を合わせて解決しようとする考え方が生まれている。

 生態系の保護などは、これまでも動物園が訴えてきたことだが、これからは社会の改善がそれにつながってくると強調。貧困問題の解決、ひいては世界平和の実現に向けた可能性が、動物園にあると感じながら、日々の業務に励んでいる。(北村博子)

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