働き方

孤立や燃えつきを回避 米国で在宅に新たな企業文化 

 新型コロナウイルスで在宅勤務が急速に浸透する中、米国企業は社員のワーク・ライフ・バランスの見直しを迫られている。仕事と私生活の境界が曖昧になったことで「働き過ぎ」に陥ったり、対面のコミュニケーション減少によるストレスが増すなど新たな環境下での問題が顕在化しつつあるためだ。出社を前提とした交流行事をオンライン上でどう再構築するかも課題で、各社が知恵を絞っている。

 孤立や燃えつき回避

 米アキュイティ保険のベン・ザルツマン最高経営責任者(CEO)は社員のワーク・ライフ・バランスの両立を促進するユニークな道具を有している。高さ約20メートルの観覧車だ。

 ザルツマン氏は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)以前、ウィスコンシン州シボイガンの本社「社内」に設置されたこの観覧車を定期的に動かしていた。社員は月に2度ほど家族連れでこの観覧車を利用できる権利が与えられ、飲み物や子供向けの料理も振る舞われるイベントが開かれていた。

 こうした定時後の社内行事は企業が社員の士気を高め、連帯感を醸成するための象徴的な手段となっていた。しかし、新型コロナの感染拡大でこうした時代は終わり、社員満足度と生産性の双方を追求する企業はかつてない困難に直面している。

 経済誌「スローン・マネジメント・レビュー」が在宅勤務下におけるワーク・ライフ・バランス支援策について人事担当者を対象にアンケートを実施したところ、「勤務時間の柔軟化」と「働く親への支援」に多くの企業が取り組んでいることが分かった。調査によると、一部の企業は在宅勤務への恒久的な移行を検討しているという。

 働きやすい環境を維持するため、一部の企業は独自にアプローチしているものの、「社員に休暇を取らせる」という方針についてはどの企業も一貫している。感染への懸念から旅行などの計画を立てにくいほか、失業への懸念が強まっていることから、休暇を取らない社員が増加しているためだ。

 オンライン調査開発会社のサーベイモンキーは、社員が有給休暇の日数を自分で決めることができる無制限休暇制度を導入している。ただ、この制度の利用をめぐっては社員が休みすぎという悪印象を避けるために、かえって休暇取得を控える向きもある。そこで、同社は6月末までに「ケアフレックス休日」を数日取得させることで、この問題の解消に取り組んだ。

 ビジネス・チャットツールのスラック・テクノロジーズは4月以来、月に1度の金曜日に全社員に休暇を取らせることを義務付け、年末まで方針を維持するつもりだ。また、スラックは「緊急休暇」を新設し、社員が有給休暇を使い切らずにパンデミック中に発生した問題に対処できるよう配慮している。

 メンタルヘルス対策も急務になっている。私生活と仕事の不鮮明化で「燃えつき」状態に陥ったり、社会的接触の欠如から孤立感を訴える社員が増加しているためだ。

 こうした問題に対し、サーベイモンキーは在宅勤務における社員の状況把握を目的としたアンケートを作成するなど、強みを生かした施策を打ち出している。ほかにも、個人の秘匿を保持したメンタルケア・サービスを提供するほか、テレワーク環境整備に500ドル(約5万3000円)の補助金を提供するなどで社員を支援している。

 1日に休むことなく行われるビデオ会議も在宅勤務のストレスの要因の一つだ。カレンダーソフトウエアを手掛けるクロックワイズは週の労働時間のうち平均12%以上を会議に費やすなど、頻繁なビデオ会議がストレスを引き起こしている。こうした問題に対し、ソフトウエア開発会社のセージ・インタックは各会議を当初の予定から5~10分程度ずらすことで対応しており、職場勤務に復帰後も継続する方針だ。

 ネットで講座や交流

 アキュイティの観覧車は同社のかつてのワーク・ライフ・バランス施策における重要な要素を反映していた。それはレクリエーション活動だ。同社はフィットネスセンター、クラブといった活動を通じて社員の士気を高め、心身のリフレッシュにつなげてきた。だが、在宅勤務下ではこうした出社を前提としたイベントや企業風土の再現に苦戦している。

 同社によると、観覧車の招待券はレストランや地元の小売店(またはネットショッピング)で使えるギフトカードに取って代わっている。フィットネスセンターも今は実地でのレッスンに代わってオンライン講座を提供している。

 セキュリティー教育ソリューションベンダーのノウビー4も家庭で企業文化を再構築しようとしている。人事担当シニアバイスプレジデントを務めるエリカ・ランス氏によると、同社は社内イントラネットを通じてキックボクシングやヨガなどのオンライン講座の提供を始めた。また、管理職は子供やペットなど新しい“同僚”の写真をシェアするよう社員に伝え、コミュニケーション維持を図っている。

 ランス氏は「仮想空間での社員交流の場は今後も続き、対面でのコミュニティーにも生かされるだろう」と話した。(ブルームバーグ Breanna T Bradham)

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