働き方

雇用調整助成金の特例12月まで延長 度重なる変更で現場混乱、企業は不満も

 新型コロナウイルス感染拡大による業績悪化から従業員の雇用を守るため、雇用調整助成金の特例が12月まで延長されることが決まった。政府は支給額や対象を過去最大級に拡充し、企業に雇用の維持を促す。米国などに比べて完全失業率の悪化が小幅にとどまるといった効果が見られる一方、度重なる制度や手続きの変更で支給事務を担う現場は混乱。支給に時間がかかり、企業からは不満の声が出ている。

 支給決定まで時間

 助成金は、これまで災害時などに特例的に拡充されてきた。今回は8330円(現在8370円)の日額上限を1万5000円に引き上げ、従業員を解雇しなかった中小企業には費用の10割を支給。申請書類も簡素化し、支給までの目安期間を2カ月から2週間に短縮した。

 加藤勝信厚生労働相は7日の記者会見で、支給決定まで「大体9日間ぐらい」と胸を張った。だが東京都で製造業(社員13人)を営む男性は「うちは支給まで1カ月以上かかった。こんなに遅くては、持たない企業もあるだろう」と指摘する。

 同社は4、5月分を6月22日に申請。支給は7月31日だった。状況を確認しようにも労働局に電話がつながらず「気をもんだ」と振り返る。都内の別の製造業者(社員15人)は6月5日に申請し、8月6日に支給された。社会保険労務士にも相談して書類を整えたが、何の連絡もないまま2カ月が過ぎたという。

 時間がかかるのは、政府が制度や手続きを少しずつ変えたことも影響している。ある労働局職員は「相談を受けて対応しても、同じ人が次に来た時には状況が変わっている。変更の効力が過去に遡(さかのぼ)るので追加給付も必要。現場は振り回され、混乱した」と話す。

 助成金は過去の不景気の経験から、製造業の大規模休業を想定した作りになっている。コロナ禍で最初に影響を受けた観光、飲食業の中小零細企業には使い勝手が悪かったが、厚労省幹部は「与野党議員に指摘されるまで気付かなかった」と振り返る。外部の要望に応じて拡充や簡素化を繰り返し、現場を混乱させる要因になった。

 「やめ時難しい」

 感染拡大が収まらず、政府は9月末までの期限を12月まで延長することを決めた。政府は年明けの縮小を模索するが、タイミングを誤ると休業している人々が失業に転じてしまう恐れがあり、慎重な判断が迫られる。政府関係者らは「企業にとっては麻薬のようなもの」「やめ時が難しい」と頭を抱える。

 別の厚労省幹部は運用面について「手続きを簡素化したために申請者の情報が少なく、事後のチェックや分析が難しい」と反省点を挙げ「平時から国が事業者情報を細かく把握していれば迅速に支給できるが、日本はそうしていない。非常時にどんな制度が必要なのか、事前に議論しておく必要がある」と話した。

【用語解説】雇用調整助成金

 自然災害や景気悪化などで事業活動を縮小せざるを得ない企業が、従業員を一時的に休業させるなどして雇用を維持する場合に、企業が支払う休業手当や賃金の一部を国が補填(ほてん)する制度。本来の助成率は中小企業が3分の2、大企業が2分の1だが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、期間限定で最大10割(大企業は4分の3)にまで引き上げた。日額上限も従来の倍近い1万5000円に増額。申請書類の記載事項を大幅に減らすなど、手続きも簡素化した。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus