日本航空(JAL)は1700人程度を予定していた2021年度の新卒採用活動を5月に取りやめ、同年度の採用は200人程度にとどめる。2022年度については現時点で未定としている。
2021年3月期の連結最終損益でANAHDは過去最大の5100億円、JALも2700億円とそれぞれ巨額の赤字を見通す。世界各国の入国規制により国際線の立て直しには長期間の対応を余儀なくされる。
実際に両社とも家電量販チェーンのノジマなど他業界に社員を出向させるなどで危機をしのぐのが精いっぱいで、コロナ禍前のような規模での新卒採用の余裕はもはやない。
就職先人気企業ランキング上位が様変わり
航空、旅行の各社に共通するのは大学生を対象にした各種の就職先人気企業ランキングでこれまでは上位に位置してきた常連組の超人気企業である点だ。
2021年3月卒見込みの学生を対象にマイナビと日本経済新聞社が昨年実施した調査では文系総合でJTB、ANAが第1、2位、JALは4位に付けた。文系女子に限るとJTB、ANA、JALがトップ3を占めた。
昨年まではこのほかのランキング調査でもこの傾向は顕著だった。
しかし、コロナ禍の直撃を受けて状況は一変した。今年の夏と現在進行中の秋冬のインターンシップ(就業体験)を通じ、就活に取り組み出している大学3年生らの学生を対象にした調査で航空、旅行のランクが急落し、上位から消えたのは言うまでもない。
ダイヤモンド・ヒューマンリソースが6月から11月にかけて大学3年生と大学院1年生を対象に実施した「就職先人気企業ランキング調査」によれば、航空、旅行は上位20位から姿を消した。
とりわけ文系女子の調査結果はこの傾向が顕著で、同社は12月8日発表のリリースで「文系女子の人気の高かったオリエンタルランドやJTB、日本航空、ANAなどエンターテインメント、旅行、運輸業界はコロナ禍の影響を大きく受けて順位を下げた」とコメントを添えた。
大企業の大半は「例年並み」「遜色ない」というが…
こうした新卒採用状況の激変でも、確かに、人気業種の航空、旅行の総崩れをもってして、「就職氷河期」の再来を声高に唱えるのは早計との見方がある。
実際、大企業のほとんどは2022年度の新卒採用に向けて精力的に動いている。この夏場もリモートや対面方式とリモートを組み合わせたハイブリッドなインターンを実施するなど、コロナ禍にあってもこれまでと変わらない水準を維持しながら採用活動に取り組んでいる。
人材サービス大手による調査もこうした大企業の新卒採用活動の動向を裏付ける。
マイナビが9月から10月にかけて実施した調査では2022年度の新卒採用を予定している企業は8割近くに達した。マイナビでは、この水準を「例年並み」と分析する。
リクルートキャリア・就職みらい研究所の9月の調査でも、2022年度採用を予定しているとの回答がほぼ6割に達し、前年度の採用予定と「遜色ない水準」と結論付ける。
しかし、現実は厳しい。「例年並み」「遜色ない」とのんきには構えていられないデータが並ぶ。