ミラノの創作系男子たち

ファッション企業で知財トラブルを解決 弁護士ステッラが「煎餅大好き」になったわけ~女子編 (1/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 馴染みのない料理を美味しいと思えるかどうか。それはおよそ馴れの問題である。頭で味の背景を理解することも大切だが、馴れが大きい。その例として、ぼくがよく紹介するエピソードがある。以下である。

 ぼくの友人のイタリア人女性がドイツ留学中、アパートを日本人の女子学生とシェアして住んでいた。日本人の彼女は煎餅が大好きでよく食べる。イタリア人はとてもでないが食べられない、と勧められても断る。しかし、日本人の学生が他の日本人の友人をアパートに誘い、皆が煎餅を食べているのを眺めていたら、イタリア人も煎餅に手を出すようになる。

 最初は不味いと感じた。だが2度3度と食べているうちに美味しいと思うようになり、5度目くらいの頃には煎餅が大好きになっていた。その後、日本の菓子といえば煎餅を思い浮かべるほどの好物になったのだ。

 ぼくがこのエピソードを使って強調するのは、仮に新しい商品を市場に定着させたいなら、どれだけ新しいモノに強制的に触れる回数を設けるかが戦術として大切だ、という点だ。一回目で離脱した後、そのままにしておけば、永遠に2回目はこない。

 この煎餅を好きになった友人が、今回紹介するステッラ・パドヴァー二である。現在、大手高級ファッション企業のなかで働く弁護士で専門は知的財産だ。商標権侵害や偽物などラグジュアリーブランドに知財トラブルは常につきまとう。今はオンライン上でのコンテンツの不正利用なども後を絶たない。

 ステッラは知財専門のミラノの法律事務所に所属していたが、数年前にヘッドハンティングされて今の職場に移った。高級品の知財トラブルはどこの企業も同じように抱えているので、競合他社や欧州委員会とのミーティングも多く、出張も頻繁だ(2020年はほぼリモートだったが…)。

 そんな彼女の子ども時代の話から聞いてみよう。

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