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コロナ禍で映画製作にも変革の波 「メイド・イン大阪」で世界へ挑め (1/2ページ)

波溝康三

 大手映画会社が東京に一極集中する中、「大阪から世界へ映画を発信しよう」と挑む大阪在住の監督や俳優らが相次いで名乗りを挙げている。大阪在住の俳優が主演兼監督を務めた2本の映画が、一昨年と昨年にかけ連続で数々の国際映画賞を受賞し、日本映画界を驚かせた。片や、国際映画祭で新作を発表しようと、邦画大作の現場で学んだ若手監督や撮影監督らが映像製作会社を大阪で発足、準備に乗り出した。新型コロナウイルス禍の中、映画製作体制の変革が求められる今、東京の映画関係者たちも“大阪からの挑戦”に関心を寄せている。

 昨年、1本の日本映画が話題を集めた。ロンドン、ミラノ、ニースなど世界の国際映画祭で外国語映画部門グランプリや主演男優賞などを受賞した「ひとくず」。

 大阪最北端にある能勢町在住の俳優、上西雄大さんが自ら企画し、監督、脚本、編集、プロデューサー、そして主演まで1人5役を務め完成させた渾身の一作は、国内の映画祭でも評判となり、現在も劇場数を増やしながら全国でロングラン上映中だ。

 幼児虐待、育児放棄という重厚なテーマに真正面から斬り込む社会派作品を、なぜ、劇映画で描こうと考えたのか?

 「数年前、精神科医から虐待の実態を聞かされ、衝撃を受けました。『虐待はただの連鎖ではない。虐待する大人もまた傷ついている』という話を聞き、ずっと気になっていたんです。絶対に映画にしたい」と構想を抱いてきたという。

 上西さんは1964年、大阪生まれ。舞台俳優として活動を始め、NHK連続テレビ小説「純と愛」(2013年)、映画「のみとり侍」(18年)などに出演。ドラマや映画の現場で演じる一方、映画製作の道を模索していた。

 大阪で撮るこだわり

 「今の日本映画界は東京が中心で、有名な小説や漫画などの原作でなければ映画化は難しい。大阪の俳優がオリジナル原作で映画化に挑むには…と考え、書き上げたのが『ひとくず』の脚本でした。地味な社会派作品だけに東京の映画会社へ持ち込んでも製作は困難だと想像できた。それなら自分で撮ろうと覚悟を決めました」と打ち明ける。

 自ら製作費を工面し、俳優のオーディションも行い、今作では国内の複数の女優賞を受賞する子役の小南希良梨を発掘するなどプロデューサーとして、一から映画製作に関わっていった。

 撮影現場では主演と監督を掛け持ちし、撮影場所も自宅近くの能勢町などでロケハンし、探し出した。

 「現在は俳優として東京と大阪を往復していますが、自分が撮りたい映画を大阪で撮るために、数年前、能勢町に大きな民家を借りたんです。ここなら機材や小道具、衣装など撮影の道具がいくらでも保管できますからね」と笑いながら説明する。

 監督1作目で衝撃の海外デビューを飾ったが、すでに次作も話題を呼んでいる。

 オリジナル脚本も手掛けた監督2作目。通天閣の立つ大阪・天王寺を舞台にした「ねばぎば新世界」では、大阪出身の元プロボクサーの俳優、赤井英和とW主演。同作が、昨年のフランスのニース国際映画祭の外国語長編映画部門で最優秀賞作品賞と最優秀脚本賞を受賞したのだ。

 「新世界で育った赤井さんとともに、大阪の魅力を世界へ伝えたい…という強い思い入れで撮った作品なんです」

 幼い頃、映画好きの祖母に連れられ、大阪の映画館に通い続け、映画に魅了された上西監督は語る。

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