働き方新時代

研究職で在宅の最適化模索 テレワーク推進もコミュニケーション課題 (1/2ページ)

 新型コロナウイルスの感染拡大で、大手企業のテレワークの取り組みが事務職や営業職だけでなく、技術研究職にも定着しつつある。研究開発の現場は装置を使った実験や研究者間の濃密な議論が欠かせないが、工夫を凝らすことで富士通は出勤率を約15%と大幅に抑制、NTTも約7割を在宅勤務とする。コロナとの戦いが長期戦となる中、各社は研究活動に最適なテレワークの在り方を模索している。

 新しい生活様式に対応するため、在宅を基本とする勤務形態の導入や国内のオフィス半減など大胆な働き方をいち早く打ち出した富士通では研究所のテレワークにも力を入れている。

 欠かせぬ雑談・議論

 情報通信や半導体、人工知能(AI)などを研究している富士通研究所は3月に予定しているオフィス移転に備え、昨年春にコロナ禍の新しい働き方を検討する専門のワーキンググループ(WG)を立ち上げ、全社員を対象にテレワークに関するアンケートを実施した。

 その結果、テレワークは論文作成に集中できるメリットがある一方、コミュニケーションの減少が大きな課題として浮かび上がった。豊田建理事は「研究開発では雑談や議論が知を創発する。テレワークのデメリットで、新しいアイデアやイノベーションを触発する機会がなくなったという意見が多かった」と説明する。

 研究活動には革新的な技術の創出と技術の活用がある。富士通研究所人工知能研究所の大堀耕太郎プロジェクトマネージャーは「まれに天才はいるが、普通は1人で考えても良いアイデアは生まれない。この課題に数カ月悩んだ」と明かす。

 打開策となったのがテレビ会議を繰り返すうちに生み出された新たな対話方法だ。「チームのメンバー全員で対話アプリのホワイトボード機能に数式を書き込むことで研究室にいるような臨場感が出て、議論が白熱するようになった」(大堀氏)という。定期的にオンライン飲み会も開催し、今ではメンバー全員でテレワーク環境の最適なコミュケーションについても話し合う。

 富士通研究所では、研究員のコミュケーション不足を解消するため、いつでも誰でもオンライン会議に参加できるようにルールを改めた。以前は参加者を限定していた会議も今はオープンにしている。豊田氏は「若手がチャット機能に書き込み、リアルタイムに自分の意見をフィードバックできることもわかってきた」と笑顔をみせる。

 WGはテレワークを常態とし、会社で行う作業はチームの結束やオープンディスカッション、ワークショップの参加などに限定して出社を特別な出来事と定義する新たな働き方の方針を策定。これを実践することで、富士通がグループ全体の出勤率を25%とする目標を掲げる中で、研究所は出勤率を15%に抑えている。豊田氏は「研究所もデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、新しい働き方を切り開いていきたい」と意気込む。

 一方、NTTや複合機大手のリコーも研究部門のテレワークを推進している。

 情報通信関連など約2300人の研究員を擁するNTT研究所はテレワークを基本とした勤務形態を採っており、装置を使った実験などを除いて研究員は在宅勤務が中心。「出社日の調整など人数管理を徹底し、昨年12月の在宅勤務率は約70%」(広報)だ。リコーも研究職の出社率を50%以下(8日発令された緊急事態宣言前)に抑えていた。

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