社会・その他

コロナ改修の五輪応援部隊宿舎、利用者ゼロのまま復元へ 費用は計約48億円

 東京五輪・パラリンピックで警備に当たる警察官が使う東京都内4カ所の臨時宿舎について、新型コロナウイルス軽症者の滞在施設に転用するため改修されたものの、一度も利用されずに元の仕様に戻されることが7日、関係者への取材で分かった。改修と元に戻すための費用は計約48億円に上るという。

 改修されたのは、江東区と江戸川区、大田区に計4カ所ある臨時宿舎。五輪とパラの警備要員である全国の機動隊員ら用のプレハブの建物で、8人程度が寝泊まりする大部屋などが連なる簡素な造りだった。

 新型コロナの感染拡大で昨年3月に五輪延期が決定。同年4月、当時の安倍晋三首相が「東京都では今月中をめどに五輪関係施設を改修し、800人規模で受け入れる施設を整備する」と表明し、急ピッチで改修が進められた。

 大部屋に間仕切りを設けて個室化したほか、共有のトイレやシャワールームなどを設置。近くの別棟には看護師らが常駐する部屋なども設け、約37億円をかけて工事は4月末までに完了した。

 一方、都によると、同様に軽症者ら向け施設として想定されていたホテルの確保も順調に進んだ。風評被害への懸念もあったが、新型コロナによる利用客減などを背景に、4月中旬からの都の公募には90ほどの事業者が応募。計2万室を超える部屋を用意することができたという。

 ホテルは部屋ごとにトイレがあり、食事の提供もしやすいなど、設備面や衛生面でメリットが多く、都の担当者は「ホテルの優先順位が高くなった」などと説明する。

 また、関係者によると、臨時宿舎については一時、政府側から医療施設として活用する案も示されたが、実現しなかったという。

 その後、都が療養施設として利用しない意向を示し、五輪・パラが近づいたことから元に戻すことが決まった。全国からの応援部隊は1万人を超える規模が見込まれており、個室化された現状では収容能力が足りないと判断した。

 復元工事はすでに始まっており、費用は約11億円を見込んでいるという。

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