働き方

「あの人、いい人なんだけどね…」 なぜ“職場の人気者”は年収が上がらないのか? (2/3ページ)

 ■部下を厳しく育てることとパワハラの違い

 また、マネジメントに求められるのは、ヒューマンマネジメントとタスクマネジメントだけではありません。

 組織のビジョンや戦略を策定する「リーダーシップ」や、人・モノ・カネ・契約・情報などのリスクを管理する「リスクマネジメント」も求められます。

 リスクマネジメントで重大なミスを犯すと、年収が下がるだけではなく、最悪の場合、懲戒解雇されることもあり得ます。

 パワハラやセクハラまがいの言動は、特に注意が必要です。

 2019年5月には、パワハラを防止するための「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」が成立しました。大企業では2020年6月1日から、中小企業では2022年4月1日から、パワハラ防止のための措置が義務づけられました。これによって必要な措置を講じていない企業は、是正指導の対象となります。

 部下を育てるためには、ときには厳しく注意することも必要です。

 それが相手のためを思ってやっていることだと客観的に判断できれば、人事はパワハラとは考えません。

 しかし「ストレスが溜まっていたから」「ムカついたから」など、自分のためだけに部下を叱責したり、同僚に悪意のある行動を取った場合にはパワハラと判断します。

 ■セクハラはキャリアにとって致命傷に

 セクハラも、「男女雇用機会均等法」第11条によって、防止措置をとることが事業主に義務づけられています。

 セクハラの行為者は、懲戒処分の対象となり、社内での信用や地位を失います。また、行為者だけでなく、企業としての社会的信用の失墜も招くことになります。

 ただ、セクハラには、明確な基準はありません。

 たとえば、女性社員に「髪型を変えたね」「今日の服かわいいね」と声をかけただけでも、相手が不快に感じたら、それはセクハラに当たります。「○○ちゃん」と呼ぶだけでも、セクハラになるかもしれません。

 それがどのような場面で起こるかというと、「自分はこの女性と仲がいいんだ」「俺は好かれているんだ」「だから許されるんだ」という間違った自己認識をしている場合です。

 こうした「勘違い」が、セクハラ事件を引き起こしてしまうのです。

 セクハラは法的責任を問われる可能性が高く、適切な防止策や相談対応をしなかった事業主も、民法上の責任を負うことがあります。

 そうなった場合、あなたのキャリアにとって一生残る致命傷となります。人に嫌われるのも、程度問題です。くれぐれも注意してください。

 ■「PM理論」で自分のタイプをチェック

 ヒューマンマネジメントとタスクマネジメントのバランスは難しい問題ですが、もうひとつ参考になる考え方があります。

 私が管理職研修でよく使っている「PM理論」というものがあります。これは社会心理学者・三隅二不二さんが1966年に提唱したリーダーシップ行動論のひとつです。

 「PM理論」とは、リーダーシップは「目標達成能力(Performance)」と「集団維持能力(Maintenance)」の2つの能力要素で構成されるとして、組織のリーダーのタイプを4つに分類したものです(図表2参照)。

 横軸が「人の気持ち」=ヒューマンマネジメント、縦軸が「成果」=タスクマネジメント、そのバランスで4つのタイプに分けられます。新人やメンバークラスの人も将来の参考になるはずです。自分はどのタイプなのか、チェックしてみましょう。

・PM(説得型)

 目標を明確に示し、成果をあげられるとともに、集団をまとめる力もあるタイプです。「なんでやるかわかるか?」と目標達成の意義を伝え、「やったか?」と進捗もきちんと管理し、「できたな、よかったな」と部下の気持ちのメンテナンスもできます。目標達成と集団維持、どちらの能力もある理想的なリーダー像といわれています。

 Pm(指示命令型)

 目標を明確に示し、成果はあげるものの、集団をまとめる力は弱いタイプです。

 パフォーマンスにうるさく、人の気持ちはあまり考えません。「仕事の意味? いいから、まずやれ!」「手を動かせ!」「おい、やったか?」のような管理職です。「あの人、仕事はできるけど、絶対一緒に仕事したくないよね」はこのタイプに多いです。

・pM(参加型)

 集団をまとめる力はあるものの、成果をあげる力が弱いタイプです。パフォーマンスにはあまりうるさいことをいわず、人の気持ちだけを見ています。

 「元気? 最近どう?」「飲み行こうか」みたいな管理職です。部下から人気はありますが、「あの人いい人なんだけど、仕事できないよね」といわれがちなタイプです。

・pm(委譲型)

 成果をあげる力も、集団をまとめる力も弱いタイプです。「よきにはからえ、くるしゅうない」と、部下に仕事を丸投げして、気持ちのケアも特にしません。目標達成と集団維持、どちらもできない・しない管理職です。

 一般的には、理想的なリーダーは説得型、ダメなのは委譲型といわれています。ただ、部下のタイプや成長度合いによっては、必ずしもそうとは言い切れません。

 部下によってアプローチを使い分ける

 部下が新人の場合は、「つべこべいわず、とにかくやれ」「いいから皿洗えよ」といった、指示命令型のほうが、新人の成長が速かったりもします。

 部下がチーフなどに成長している場合は、すでに目標の意味も理解し、放っておいても成果が出せるくらいに自立していたりするので、説得型の「なんでやるかわかるか?」といった話は鬱陶しく感じられたりもします。

 成長した部下には、むしろ「飲み行こうか」といった参加型のアプローチのほうが心地よかったりもしますが、仕事の目的も理解し、心のケアもできている部下には「飲み行こうか」といっても「いや、忙しいんで」と断られることも多いです。

 いっそ「すべて任せた」「何か困ったことがあったらいってね」といった委譲型の放任主義のほうが、伸び伸びと仕事ができて、部下は成果を出しやすかったりもします。

 結局、どれが正しいのかというと、残念ながら正解はありません。マネジメントやコミュニケーションのスタイルは、相手によって変える必要があるのです。

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