働き方

禁酒のバーにて「ジャズで酔う」 3度目緊急宣言で喫茶に、店の灯絶やさず

 新型コロナウイルス禍で1年以上も苦境に立つ飲食店にとって、3度目の緊急事態宣言は想像以上に厳しい内容だった。対象エリアでは酒の提供が事実上できなくなり、早々と休業を決めたバーも少なくない。それでも業態を変えたり、新たなサービスに乗り出したりして、営業を続ける店がある。売り上げが伸びるわけではないが、経営者は「来た人に満足してほしい」。感染対策に気を使いながら、店の灯は絶やさないと決めた。

 「やれることを」

 大阪随一の歓楽街・北新地。長引く時短要請や夜の街への警戒感から、1年以上も閑古鳥が鳴いている。

 「むざむざと手をこまねいて、休んでいるわけにはいかない」。北新地のバー「ムルソー・セカンドクラブ」のオーナー、東司丘(としおか)興一さん(69)は力を込める。

 過去の宣言や蔓延(まんえん)防止等重点措置による府の要請に合わせ、時短営業などに応じてきた同店。しかし3度目の宣言は、アルコールの提供を事実上禁じる内容だった。

 「酒が悪者のように扱われていることや、行政のやり方には納得がいかない」。東司丘さんは怒りを覚える一方、「だが、やれることはやっていきたい」。苦肉の策として浮かんだのが、酒の提供をやめるとともに、自慢の音響設備を生かし、ジャズ喫茶として営業を続ける道だった。

 営業は午後3~8時。店内には良質なスピーカーやグランドピアノなどもある。宣言が発令された4月25日以降、コーヒーや紅茶とともに、ジャズをゆったりと楽しむ空間に変えた。

 「ノンアルコールは酒と違い、2~3杯目を頼むことはない。売り上げとしては大打撃」と東司丘さん。それでも「来ていただいたお客さまにとってジャズ喫茶が新しい出会いとなるかもしれない。営業する以上は満足していただけるように頑張りたい」と前を向いた。

 将棋バーも模索

 酒を飲みながら将棋が指せる「将棋バー~wars(ウォーズ)~」(大阪市北区)も、3度目の宣言を機に新たな方向性を模索するようになった。

 過去2回の宣言では自主的に店を閉めた。だが宣言が明けても、常連客はほとんど戻ってこなかった。

 「ここでまた閉めてしまうと、今まで積み上げてきたものがなくなってしまう」。経営する相沢翔さん(35)には危機感があった。客とのつながりを守るため、今回は店を閉めないと決めた。

 府の要請に従って酒類は提供せず、ジュースなどソフトドリンクのみでの時短営業が続く。初日となった4月25日は、外出自粛の影響もあって「ほとんど集客がなかった」(相沢さん)。

 ただ、事態を傍観するわけではない。今後はオンラインを活用した棋譜(きふ)の添削サービスも始める予定だ。記録した棋譜を送ってもらい、無料通信アプリ「LINE(ライン)」などで添削や解説に応じる手法を検討しているという。

 相沢さんは「バーの要素を持ちながらも、将棋を気軽に楽しんでもらえるサロンのような場所にしていければ」と語った。(石橋明日佳、小川恵理子)

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