社会・その他

三浦半島の異臭騒ぎに“第2波” 一時鎮静化も再燃、「気のせい説」も

 神奈川県の三浦半島に位置する横須賀市や三浦市、東京湾岸の横浜市などの自治体で昨年6月以降相次いだ「異臭」を指摘する通報が、再び増えはじめた。一時は沈静化していたが、今年3月に1例発生すると、そこから通報ラッシュに発展。さながら“第2波”の様相を呈している。県の機関は調査を進めているが、なお原因解明には至っていない。報道が人々の心理を刺激することで通報の連鎖が起きるといった「気のせい説」もささやかれている。(外崎晃彦)

 県の集計によると、昨年6月以降、今年3月末までに発生した異臭の日付・エリア別の事例は計19例で、通報は計400件以上。内訳は昨年6月4日~11月6日が計12例で、通報が計370件以上。12月~今年2月の“空白期間”を挟み、再燃した3月は1カ月の間だけで計7例、通報は計34件にのぼった。

 発生源は複数か

 通報場所は、昨年が横須賀、三浦、横浜、逗子、藤沢、茅ケ崎、鎌倉の各市と葉山町の計8自治体。今年が横浜、横須賀の2自治体。通報内容は、主に「ガス臭い」「ゴムの焼けたような臭い」「薬品臭い」「シンナー臭い」など。そのほか「ニンニク臭い」「硫黄臭い」「腐敗臭」などもあった。

 相次ぐ通報を受け、県は昨夏以降、地元の消防署と連携し、隊員に通報時の現場の空気を採取してもらい、分析している。ただ、発生源の特定など原因解明は難航している。県環境科学センター調査研究部の坂本広美部長は「通報内容や臭い、時間や場所はまちまち。発生場所も発生源も1つではなさそうだ」と話し、頭を悩ませている。

 県が原因解明につながりそうな事例として注目しているのが「異臭騒ぎ」の皮切りとなった昨年6月から7、8月と続いた3例だ。6月4日は午後8時ごろに三浦市で最初の通報があり、その後、時間を追って通報地点が北上した。

 その時間帯の三浦半島は南風が吹いていたため「半島の南側海上に発生源があったと考えられる」(坂本部長)。一方、7月17日は北風だったため東京都方面に、8月21日は南西の風だったため東京湾上に、それぞれ発生源があったと考えられるという。

 「流言」にくぎ

 また、その後の調査で採取できた空気の「臭い成分」はイソペンタン、ペンタン、ブタンなど。いずれもガソリンに含まれる物質だ。10月26日に採取した際は濃度が高く、臭いも強く感じられたという。

 これまで異臭が話題に上ると、インターネット上などでは、大地震の予兆ではないかといった“憶測”が飛び交ってきた。そのため、県はホームページ上で「検出されたイソペンタンなどの物質が、地殻変動に伴い発生するという知見は確認できていない」「地震の前兆として異臭が発生するという科学的な根拠はない」という県温泉地学研究所の見解を紹介し、不安の解消を図っている。

 そのほか、「青潮」との関連性についても、東京湾岸の神奈川県側の海域では令和2年度以降、青潮の発生は確認されていないといい、県は因果関係に否定的な見方を示している。

 心理学者も肯定的

 また新たな見解も浮上しつつある。「気のせい説」だ。報道が敏感にさせることで臭いを感じやすくさせている▽もともとあった臭いであり、気にする必要はない-といった楽観的な内容で、この説には県の担当者も一定の理解を示す。

 「昨年6月4日の事例は通報が200件以上あり、報道によって多くの人に印象付けられた」と話し、「同年10月と今年3月に相次いだ各事例も同様で、1件報道されると通報が連鎖する傾向がある」(県担当者)としている。

 報道が通報の連鎖を招くという指摘については、神奈川大学人間科学部で心理学を専門とする杉山崇教授も肯定的だ。杉山教授は「地震などの不安が広がると、普段から存在する臭いにも過剰に反応してしまうこともある」と解説。「脳が勝手に臭いを作り出し、錯覚することもあり得る。さまざまな心理的要因が重なって通報件数の増加につながっているのではないか」と話す。

 ただ、通報が多く寄せられる以上、行政機関としては「気のせい」で片づけられる話ではなく、坂本部長は「不安を広げないよう、情報を公開しながら調査を進めていく」と力を込めている。

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