働き方

トヨタ、パワハラ撲滅不可欠 世界的企業、取り組み注目

 トヨタ自動車の男性社員=当時(28)=が上司のパワーハラスメントを受けて自殺した問題で、遺族との和解が成立した。3年半以上もかかり、当初、危機感が薄かったことがうかがえる。「パワハラを断固として許さない」。再発防止の取り組みにどうやって実効性を持たせるか。世界的企業が課題を突き付けられている。

 社内で共有されず

 「ばか、アホ」「こんな説明ができないなら死んだ方がいい」「なめてんのか」。2015年に入社した男性は翌年、車両設計を担当する部署に配属されると、直属の上司から毎日のように罵詈(ばり)雑言を浴びせられた。

 精神科を受診後、いったん休職。復帰したものの、問題発言が社内で共有されていなかったため、再び同じ上司の下で働くことに。復帰当初は離れていた席も後にそばに移され、ほどなく男性は「上司が廊下でぶつかるようなしぐさをしてくる」「目線が気になる」と話すようになった。

 男性が社員寮の自室で命を絶ったのは、「もう精神あかんわ」と漏らした約4カ月後、17年10月30日のことだった。

 豊田章男社長は19年11月半ばすぎ、男性の自殺が労災認定されたとの報道で初めて事態を知った。10日後には、遺族に直接謝罪し、トップダウンで原因究明を指示した。

 初動の立ち遅れ。情報共有のなさ。同社幹部は「危機感の欠如、アンテナの低さは最も反省すべきところだ」とうなだれる。

 三菱電機や電通、日立…。若手社員を自殺に追いやるパワハラは、日本企業が持つ根深い病巣と言える。民間企業を対象にした厚生労働省の実態調査では、約8000人の労働者のうち約3割が過去3年間にパワハラに遭ったと回答。約半数は侮辱や暴言といった精神的攻撃を受けたと訴えた。

 昨年6月施行の女性活躍・ハラスメント規制法は、大企業に防止対策を義務付け、22年4月からは対象を中小企業に拡大するが、罰則は設けられなかった。「労働者が泣き寝入りする現状は変わっていない」。日本労働弁護団事務局次長の新村響子弁護士の言葉だ。

 泣き寝入りの現状

 懲罰規定をより明確化、若手社員に毎月アンケート、従業員の評価に関する引き継ぎ強化、精神科の専門医が職場復帰を支援…。

 トヨタが打ち出した対策について、「職場のハラスメント研究所」(東京)の金子雅臣代表理事は「本当にブレーキをかけられる仕組みを作る必要がある」とし、調査・提言のため独立性の高い第三者委員会を設置するべきだと指摘する。

 「仕組みは作ったが完成ではない。最終責任者である私が事実を忘れず、改善し続けていく」

 豊田社長は遺族の前でこう誓ったという。パワハラを撲滅することができるのか。真摯(しんし)で継続的な取り組みが求められる。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus