キャリア

創業1100年、質も人気も1番を目指す京人の粋

 田中伊雅仏具店 田中雅一さんに聞く

 「ナンバーワンを目指せ」

 創業1100年を超える田中伊雅(いが)仏具店(京都市下京区)の70代目として、自らに言い聞かせている言葉だ。

 9世紀末に仁和寺(右京区)の門前で創業した国内屈指の老舗に生まれ、幼いころから自然と仏具職人を志すようになった。

 高校時代から仕事を手伝い、寺の仏具を中心に個人宅の仏壇の設計にも携わる。自らの言葉に裏打ちされるように、設計した仏具には必ず新しい要素を取り入れてきた。過去にはスワロフスキー社製の青いクリスタルガラスをあしらった天蓋(てんがい)の設計にも挑戦。「新しいものを作らなきゃ。どの寺の仏具も同じなら興味わかないでしょ。納得のいく仏具ができたときには何とも言い難い」と笑顔で話す。

 高みを目指す背景には、伝統文化を守りたいとの強い気持ちもある。だからこそ、制作に携わる鋳物師や彫金師らが持つ技術を絶やさないためにも販売する仏具はいずれも高額に設定。「うちは日本一高い仏具屋なんです」と明かす。1千万円を超える商品も取り扱うが、価格に勝る品質で信頼を勝ち取り、上品(じょうぼん)蓮台寺(北区)や竹林寺(高知県)、浅草寺(東京)など全国の寺院に仏具を納めてきた。

 仏具の設計に励む傍ら、京都伝統工芸協議会会長などを兼任。今年の祇園祭では、山鉾(やまほこ)の一つ、大船(おおふね)鉾の龍頭(りゅうとう)に金箔をはる工程にも携わり、幕末の焼失以前の姿の再現に貢献した。

 次なる目標は、伝統産業のテーマパークの建設。理事長を務める京都伝統産業交流センター(左京区)で茶道や華道の体験や、仏具や清水焼に触れることができる空間を作り、伝統工芸品を日常で味わえる場所を作りたいと計画している。

 京都の歴史そのものといえる老舗の主は力を込める。「仏具を作り続けていたから千年続いた。質も人気も1番を目指し、京都の文化を守り続けていく」(鈴木文也)

 【プロフィル】たなか・まさいち 昭和27年、田中伊雅仏具店69代目の長男として誕生。高校在学中からアルバイトとして働き始め、京都産業大経営学部卒業後、同社に就職。30歳ころから設計を任され、これまでに制作した仏具は100を超える。平成9年に社長に就任した。仏壇に1日10回手を合わせることを心がけている。

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