社会・その他

「医療素人」現場は反発、機器導入に有無言わせず 日大背任事件

 日本大学医学部付属板橋病院の建て替え工事をめぐる背任事件は、同じ病院の医療機器の契約にも飛び火した。27日に背任容疑で再逮捕された元日大理事の井ノ口忠男容疑者(64)と大阪市の医療法人グループ「錦秀会(きんしゅうかい)」前理事長の籔本雅巳容疑者(61)。関係者によると、2人は結託し、現場の反発をはねのけて医療機器の分野にも進出していったようだ。

 昭和45年に建設された日大医学部付属板橋病院(東京都板橋区)。施設も医療機器も老朽化していた同病院に井ノ口、籔本両容疑者と懇意の医療コンサルタント業者が現れたのは、昨年のことだった。

 「医療機器を入れますから」

 コンサル業者は板橋病院の事務方に告げた。MRIなど医療機器は耐用年数を迎えても更新されない状態が続いていた。吉報かと思いきや、日大関係者はその後の言葉に耳を疑った。

 「この型番にします。もう決まりましたので。理事長にもOKもらっていますんで」

 業者は、日大トップの田中英寿理事長(74)の名前を出し、有無を言わせない雰囲気だったという。

 板橋病院ではこれまで高額の医療機器については臨床の教授をトップとする常設の「物流委員会」で複数のメーカーのプレゼンテーションや現場からのヒアリングも重ねて決めてきた。だが、提案はその全てを飛ばすものだった。

 「医者に聞かないとまずいんじゃないの」。表立って反発した一部は昨夏、人事で病院を去った。その後、医療機器の導入は「医療はド素人の井ノ口容疑者」(日大関係者)の主導で加速していったという。

 病院関係者は数年前、井ノ口容疑者がMRIとCTの違いも知らず、がくぜんとしたことがある。「MRIは電磁波、CTは放射線を使い、用途はまるで違うよ」と説明すると「そうなんですか」と感心するばかりだったという。

 板橋病院には結局、井ノ口容疑者が推し進めた海外メーカー製のMRI、CT、血管撮影装置の計7台が納入された。だが、現場の医師は「高価なわりに使い勝手が悪い」とこぼす。

 更新されたMRIはいずれも電磁波が強い機種で、画像は鮮明なものの、骨折などで体内に金属の入った患者は発熱するおそれがあり、現場の要望とは相いれなかった。現在は数が減った旧式のMRIに需要が集中し、予約が取れない状況に陥っているという。

 板橋病院ではここ数年、赤字脱却を掲げ、人員のリストラなどを進めてきた。それだけに病院を舞台として、日大に約2億円の損害を与えたとする今回の事件への現場の憤りは大きい。日大関係者は「手術と一緒。膿(うみ)を出さないといけない」と口にした。

(荒船清太、吉原実、石原颯)

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