【社長を目指す方程式】あなたや同僚はどのタイプ? 商談や職場で“難しい相手”に対応する方法

2019.7.22 07:00

 こんにちは、経営者JPの井上です。「人は感情の生き物」と言いますが、上司の皆さんも日頃様々なタイプの商談相手や部下たち、あるいは上司たちとの間で、相手の感情や気分といったものに気を砕き、コミュニケーションに気を使われていらっしゃることと思います。

 できる社長には人たらしタイプも多いですが、彼らの得意技は「相手によってコミュニケーションスタイルを使い分ける」こと。

 そこで今回は、そんなコミュニケーションテクニックを自分も身につけたいという上司の皆さんのために、動機欲求に基づく行動パターンをもとに人を4タイプに分ける「DiSC理論」を紹介いたします。

 DiSC理論は1920年代に心理学者ウィリアム・M・マーストン博士により提唱され、1963年に行動科学者ジョン・ガイヤー博士により自己分析のツールとして応用されたものが発祥のようです。この理論を用いた人材育成ツールは全世界84カ国で4500万人以上の利用実績があり、「行動特性分析」のグローバルスタンダードというべき存在になっています。

 最近、この理論をベースにした『世界にバカは4人いる』(トーマス・エリクソン・著/フォレスト出版)が日本語版翻訳発刊され、ベストセラーになっています。原書はスウェーデンで85万部を突破し、世界40カ国翻訳決定とのこと。この後ご紹介しますが、DiSC理論の4つのタイプ~主導型を「赤」、感化型を「黄」、安定型を「緑」、慎重型を「青」として、それぞれがもつ困った部分にどう付き合うかなどを面白おかしく紹介しています。

 今回はこの『世界にバカは4人いる』を参考にさせていただきながら、私たちが4つのタイプをどう知り、活用できるかについて見てみます。

今回の社長を目指す法則・方程式:

ウィリアム・M・マーストン+ジョン・ガイヤー「DiSC理論」

 4つの性格の特徴

 DiSC理論では人間の行動傾向を「D、i、S、C」すなわち、「D/Dominance」=主導型、「i/influence」=感化型、「S/Steadiness」=安定型、「C/Conscientiousness」=慎重型の4タイプに分類します。

 そもそも自分がどのタイプであるのか。相手はどのタイプなのか。自分と他者の違いを把握することで、意志疎通をより円滑に行えるようにしようというコンセプトです。

 この4タイプは、「外交的・能動的・実行型か、内向的・受動的・消極的か」と「タスク・問題重視型か、人間関係重視型か」の二軸による4象限に対応しています。

「外交的・能動的・実行型」×「タスク・問題重視型」=赤(D:主導型)

「外交的・能動的・実行型」×「人間関係重視型」=黄(i:感化型)

「内向的・受動的・消極的」×「人間関係重視型」=緑(S:安定型)

「内向的・受動的・消極的」×「タスク・問題重視型」=青(C:慎重型)

 それぞれの特徴は表の通りですが、簡単にまとめると、

 赤(D:主導型)=意思決定が速く自分なりのやり方で結果を出そうとする。相手に対して言いたいことをはっきり言う。他人にコントロールされることを嫌がり、自分で仕切りたがる傾向がある。形式的なルールを好まず、和を保つことにはあまり関心がない。

 黄(i:感化型)=感情表現が豊かで、周囲を明るくする力を持っている。社交的で人と接することを好む。その反面、緻密さに欠け、仕事の成果や人に対して厳しさに欠ける傾向がある。

 緑(S:安定型)=安定した状況を好み、変化を嫌う傾向がある。慣れ親しんだ従来のやり方で成果をあげようとする。新しい仕事、新しいやり方などへの適応は遅くなりがち。自ら決断し行動するという積極性に欠ける。一方でチームワークを大切にし協調性があり、人に対してとても協力的。

 青(C:慎重型)=人がどう感じているかよりも、データや資料などの「事実」を重視する。物事を分析的、論理的に考える傾向があり、納得するまで細部にこだわる。自分が考えたやり方や組み立てなどに批判が加えられることに対して防御的になりがち。

 となります。

今回の社長を目指す法則・方程式:

ウィリアム・M・マーストン+ジョン・ガイヤー「DiSC理論」

 いかがですか? あなたの部下たちは、取引先相手は、あるいはボスは、どのタイプそうでしょう? そもそも、あなた自身はどのタイプですか?

 本来はサーベイでスコアリングするものではありますが、おそらく皆さん、おおよそ誰がどのタイプかは想定がつくのではないかと思います。

 商談で、組織マネジメントで、4つの性格にどう対応するか

 タイプを知るだけでかなり面白いですが 、上司の皆さんとしては実際にこれを使ってナンボです。商談で、あるいは組織マネジメントで、4つの性格にどう相対するか、ポイントを見てみましょう。

 まずは赤(D:主導型)タイプについて。相手は相当にせっかちであり、タスク重視で物事を効率的に進めたがります。あなたが赤タイプに相対するならば、「結論から」「具体的に」「アクションを早く」することです。まどろっこしいことや腰が重いのを赤タイプは嫌います。また達成意欲が非常に高いのも特徴。赤タイプが上司なら、曖昧な態度やそこそこのレベルの目標設定は嫌われますので、気をつけましょう…。おそらくは創業社長やプロ型社長はかなりの確率で赤タイプです。

 部下が赤タイプであったときに、お薦めの褒め方としては「成果や具体的な工夫について褒める」ことです。また、叱らなければならないときには「質問によって、自分自身で内省した上で反省を促す」スタイルが望ましいでしょう。赤タイプは自分自身で「できた・できなかった」を判断することができる人です。単純に褒めたり、叱るときに追い打ちをかけたりするのではなく、質問しながら自分自身で改善点を見つけるように促すことが重要です。

 次に黄(i:感化型)タイプについて。相手は楽しく明るい雰囲気を好みます。赤タイプとは真逆で、雑談やアイスブレークトークは必須ですね。おおつかみに「まずやってみよう」という黄色タイプですが、各論に弱く、詳細に無頓着、時間にルーズなのが黄タイプの癖でもあります。彼らはメモすることなく「はいはい」と答え、概ね右から左に抜けていきます。予定や手順の抜け漏れ防止に、黄タイプ相手は事前もプロジェクト中も事後も細かくチェック、リマインドをかけることを忘れずに。

 部下が黄タイプであったときに、お薦めの褒め方としては「人前で褒めてあげる」ことです。この上なく本人を動機付けできるでしょう。また、叱らなければならないときには「できた部分と期待も交えた上で叱る」スタイルが望ましいでしょう。詰めてしまうと折れてしまいがちです…。黄タイプの人は社会的なつながりを重視する傾向があります。従って、褒めるときは人前で、叱るときは個別と使い分けていくことが重要です。

今回の社長を目指す法則・方程式:

ウィリアム・M・マーストン+ジョン・ガイヤー「DiSC理論」

 緑(S:安定型)タイプにとって常に大切なのが「安心感」。緑タイプは、ちょっとしたことでも何か大変なことが起きてしまうのではないかと心配しがちです。不安定なものや新しいものとは一切関わりたくありませんし、大きな賭けなど絶対に出たくないのです。相手の言うことを聞く力や素直に指示に従う力は4タイプの中で最も優れていますから、緑タイプにはしっかりと計画を立てて渡してあげること。また、それをやった結果がこのようになるのだということをセットで渡して見通しをつけてあげることで不安解消した上で物事に取り組んでもらうようにしましょう。

 部下が緑タイプであったときに、お薦めの褒め方としては「データや事実ベースで褒める」ことです。抽象的、感覚的に褒められても緑は根拠が見えないと「ほんと?」と疑念を持つばかりです。また、叱らなければならないときにも「データや事実ベースで伝える」スタイルが望ましいでしょう。緑タイプには、サポートしてくれたことに対しての感謝の言葉(ありがとう、助かった、キミがいてよかった)を掛け、叱るときはできた部分と次への期待を伝えることが重要です。

 最後に青(C:慎重型)タイプですが、何事においても準備をきっちりと行う人です。仕事においては自分で事前に資料などに準備をし、詳細を分析し、当日の会議などでその件についていかようにでも話し合えるようにしておくでしょう。必要と思えば代案も複数用意します。そんな青タイプにとって、他の人がこうしたことをしないことが不思議でなりません。「ちゃんとやってください」というのが彼らの主張です。ですから当方もしっかり準備をして臨みましょう。それが社会の、組織のルールです…。ただ、全てに杓子定規というのも現実の組織においてはキツいですしゆとりもありませんから、青タイプには同時に、折に触れて「人には感情がある」「誰しもが常にパーフェクトではない、それで良いのだ」ということも諭してあげましょう。青タイプに人間味を備えさせるのも上司の仕事です。

 部下が青タイプであったときに、お薦めの褒め方としては「ありがとう」などお礼を伝えるのが効果的です。また、叱らなければならないときには「できた部分と期待を添える」ことが望ましいでしょう。青タイプの人には、褒めるときも叱るときもデータや事実ベースで伝えることが重要です。

 社長になる人は、自分の性格の把握と、相手の性格に合わせた切り込み方に素晴らしいセンスを発揮します。これを天性のものとして身に着けている人も多いですが(長年の人との関わりから実践的に学び体得されていることが多いですね)、理論から学んで体得することもできるのがDiSCです。

 詳細を更に知りたい方は、今回記事のテキストとさせていただいた『世界にバカは4人いる』(トーマス・エリクソン・著/フォレスト出版)をご一読ください。厚い翻訳書ですが、この記事をお読み頂いた上であれば、面白い事例(あるあるが豊富です)も盛りだくさんで楽しくあっという間に読めると思います。

 そして4タイプ別のコミュニケーションスタイルを、ぜひ周囲の部下たち、上司たち、取引先など(やご家族にも)に使ってみましょう。ちなみに私は、黄と青がかすかに混ざった(と本人は思っている)、真っ赤なタイプです(笑)。

▼“社長を目指す方程式”さらに詳しい答えはこちらから

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井上和幸(いのうえ・かずゆき)

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株式会社経営者JP代表取締役社長・CEO

1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。
経営者JPが運営する会員制プラットフォームKEIEISHA TERRACEのサイトはこちら。

【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。アーカイブはこちら

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