中国へ転売の3D地図、ミサイルの飛行ルート選定にも利用可能

2019.8.9 13:30

 元中国籍で埼玉県内に住む貿易会社役員の男(60)が8日、東京都心の3次元(3D)地図をNTTグループ会社「NTT空間情報」(台東区)からだまし取ったとして、警視庁公安部に書類送検された。地図情報はドローンの自動飛行などで活用の場が広がるが、業界関係者は「ミサイルのルート選定といった軍事目的でも利用できる。重要情報としての性質を把握し、より慎重に取り扱うべきだ」と警鐘を鳴らす。

 NTT空間情報によると、地図データは「GEOSPACE 3D ソリューション」と呼ばれる商品。地図に航空写真からの情報を組み合わせて複雑なデザインの建物も正確に再現し、高度の誤差は1.5メートル程度とされる。インフラ整備や防災対策などの利用を想定しており、用途によっては提供を拒否するケースもあるという。

 3D地図データは近年、ドローンの自動飛行や地図アプリの作成などに活用の場が広がっている。一方、軍事関係者によると、地形の高低情報はミサイルなどの飛行ルートの選定にも用いられる。関係者は「確実に目標に到達させて打撃を与えるために必要な情報になり得る」と語る。

 男の書類送検容疑は平成28年11月~29年1月、中国での転売目的を隠した上で、NTT空間情報と契約を結び、ハードディスクに入った3D地図データを約200万円で購入、詐取したとしている。

 男は地図データの範囲として、千代田区、中央区、港区の全域と新宿区の一部を指定。警視庁公安部は、転売先の元同僚と相談し、購入区域を決めた可能性があるとみている。捜査関係者によると、NTT空間情報に対しては利用目的を「日本への不動産投資を考えている顧客向けに案内図として使う。段階的に別の区の地図も買う予定」などと偽って説明していた。

 都内の地図製作会社の経営者は「地図はユーザーの性善説に基づいて販売しているのが実情。他国では、軍事関連施設がある地帯を白塗りにしているところもある。地図がもろ刃の剣であることを理解して取り扱う必要がある」と話した。

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