比の電力網、中国が遠隔操作可能か 政府報告書 「一帯一路」傾斜を警戒

 
マニラ近郊にある送電会社NGCPの関連施設(共同)
ビルの明かりなどに照らされたマニラ湾の夜景(共同)

 フィリピン政府の内部報告書が、同国の電力供給網は中国の支配下にあり、遠隔操作で遮断される恐れがあると指摘していることが先ごろ明らかになった。現地メディアが伝えた。中国は巨大経済圏構想「一帯一路」を主導してアジアのインフラ整備への関与を深めているが、中国に経済的に依存することへの警戒感が一段と高まっている。

 報道によると、フィリピンで全世帯の78%に電力供給する民間送電会社NGCPに対し、中国国有送電会社の国家電網が40%を出資。中国人スタッフを派遣している。

 政府報告書は議員向けに作成された。送電システムには中国人技術者のみがアクセスでき、中国政府の指示があれば遠隔で送電を遮断できると記載されている。ガチャリアン上院議員によると、送電システムの一部の説明書は中国語で書かれている。

 中国が実際に送電を遮断できるかどうかをめぐり、NGCPの広報担当者は「遮断などできない。臆測に基づいている」と主張する。だが、クシ・エネルギー相は「技術的に送電遮断は可能だ」と認めた。クシ氏によると、2017年の閣議で中国が送電を遮断できる可能性が議題になったことがあるものの、特段の措置は取られていないという。

 フィリピンで大規模インフラ整備を進めるドゥテルテ政権は、南シナ海の領有権問題を棚上げして中国の経済協力を当て込むが、政界では「フィリピンは中国に飼いならされている」(ガチャリアン氏)といった懸念が噴出している。ホンティベロス上院議員は「わが国のエネルギーシステムとインフラを完全に自前で制御できているかどうか把握する必要がある」と訴えた。

 19年9月の世論調査では、フィリピン人の54%が中国を「ほとんど信用していない」と回答。ドゥテルテ政権が中国傾斜を深めれば、国民は中国だけでなく政権にも不信感を抱きかねない情勢だ。(マニラ 共同)

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【用語解説】中国のインフラ支援 中国はアジアやアフリカを中心に各国のインフラ整備を支援し、国際的影響力を拡大している。2013年に世界でインフラ建設を進める巨大経済圏構想「一帯一路」を提唱。構想を支えるアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を主導した。支援の在り方をめぐり、相手国の経済力に見合わない巨大事業を計画し、過剰な融資で借金漬けにしているとの批判がある。17年には融資返済に行き詰まったスリランカが主要港の権益を中国系企業に譲渡した。(共同)