JFEスチールが、高炉で鉄鋼原料の銑鉄(せんてつ)を作る際のスピードを速める原料の開発を進めている。「フェロコークス」と呼ばれるもので、銑鉄を作るスピードが速まる分、エネルギー効率が高まり、二酸化炭素(CO2)排出も抑制できる。同社は現在、中規模のパイロットプラントを建設中。2022年ごろに実用化し、製銑プロセスのエネルギー消費量を10%削減したい考えだ。
エネ消費量10%削減
「世界に先駆けた省エネルギー技術になる」。JFEスチール西日本製鉄所福山地区(広島県福山市)の庵屋敷孝思(あんやしき・たかし)・コークス部フェロコークスプロジェクト推進班主任部員は、フェロコークス開発の意義をそう強調する。
同社は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて、西日本製鉄所福山地区に約150億円をかけたパイロットプラントを建設、20年6月までに試運転を始める計画だ。これまで東日本製鉄所京浜地区(川崎市)で実験してきたが、今回は製造能力が1日300トンと、およそ10倍の規模を備える。概算になるが、この設備を5基そろえ、1日1500トン製造すれば、高炉1基の10%省エネが可能になるという。
日本の鉄鋼業で主流となっている「高炉法」では、鉄鉱石と、石炭を蒸し焼きにしたコークスを高炉に投入して銑鉄を作る。コークスを投入するのは、鉄鉱石に含まれる酸素を取り除く「還元反応」を起こすためだ。ただしその過程では、大量のCO2が発生する。
フェロコークスは、還元反応を促進する触媒の役割を果たすもので、低品位の石炭70%と鉄鉱石30%を混ぜて成型した後、空気を遮断し、個体有機物を加熱分解して作る。これをコークスの一部と置き換えると、低い温度で銑鉄を作れるため、エネルギー効率も高まる。
フェロコークス内部では、石炭と鉄鉱石がすぐに反応するため、一酸化炭素が次々と発生。鉄鉱石から酸素を奪う「間接還元」が進み、銑鉄を作る時間が短縮される。一方で、コークスの炭素分がCO2と反応し、一酸化炭素を発生。このとき「吸熱反応」が起こり、高炉内部の温度が下がる。
基本技術は確立済み。西日本製鉄所福山地区では新日鉄住金と神戸製鋼所も一部参画し、フェロコークスを連続的に製造した場合や、投入した高炉の操業安定性などを評価する計画だ。庵屋敷主任部員は「建設は順調。今後は機械の据え付けを行って着実に完工し、試験操業につなげていきたい」と意気込む。