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台風損害を補填「キャンセル保険」 ラグビー組織委も救われる (1/2ページ)

 先週末の日本を襲った台風19号の被害は、日を追うごとに拡大している。昨今の自然災害の広域化、被害の大きさは想像を絶する。一日も早い復旧を願わずにはいられない。「台風によって被災した方々にラグビーで元気を取り戻していただきたい。そんな気持ちを持って試合に取り組みました」。ラグビーワールドカップ(W杯)で日本が史上初めてベスト8進出を決めたスコットランド戦の終了直後、立役者の一人、プロップ・稲垣啓太選手はそう語った。台風19号が東日本に多大な被害を出した翌13日のことである。12日実施予定だった2試合が中止され、この日も岩手県釜石市でのナミビア-カナダ戦が中止となった。日本-スコットランド戦も実施が危ぶまれていた。それだけに、台風での犠牲者に黙祷(もくとう)をささげて始まった試合は特別の思いがあったと思う。(産経新聞客員論説委員・佐野慎輔)

 ラグビー組織委救う

 それにしてもラグビー界最高峰の戦いが3試合も中止になったことは残念でならない。

 東日本大震災からの復興の思いを込めて釜石開催の先頭に立ってきた釜石市のワールドカップ推進本部事務局主幹の増田久士さんは悔しさをかみしめながら、「いつかメモリアルマッチのナミビア-カナダ戦をやりたい」という。実現に向けて関係者の尽力をお願いしたい。

 組織委員会は3試合の中止により、チケット代金を払い戻さなければならない。その損失額は20億円以上に上るともいわれる。大会予算約630億円の半分以上をチケット収入に頼る組織委員会にとって、台風襲来はまさに一大事だったが、実は損失額の大半は興行中止保険、別名キャンセル保険によって補填(ほてん)される仕組みとなっていた。

 保険金や契約内容は明らかにされていないが、通常こうした大会の損失補填額は80%とも90%とも言われる。保険金額も高額だと考えてよい。ただ、大会開催には必要な支出であり、今回、図らずもそれが窮地を救ったことは間違いない。

 実はこの種の保険はこれまでもスポーツイベントの中止、延期など多くの損害に際し、収入を補填してきている。例えば、西側諸国がボイコットした1980年モスクワオリンピックや2001年「9.11」同時多発テロ直後に米国で開催が予定されながら中止、延期されたNFL(米ナショナル・プロフットボールリーグ)やゴルフの試合などでは効果を十二分に発揮した。

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