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ジビエにも等級制度、和牛並みの格付けがもたらす変化 「使い分け」可能に

 シカやイノシシなどの野生鳥獣肉(ジビエ)の品質を和牛のように格付けする独自の等級制度を和歌山県が創設し、近年ブームのジビエ料理の普及に努めている。制度を利用すれば、品質の一定した肉を安定して仕入れることができるため、利用する飲食店も増加。県は、農産物を荒らす野生鳥獣の駆除にもつながると一石二鳥を期待する。(前川康二)

 「最高級のシカ肉を使っているので、おいしいですよ」。和歌山市小松原通のイタリア料理店「RestaurantGoGoKitchen」。おすすめ料理の「シカのタタキ風カルパッチョ」は、軽くあぶったシカの背肉に県特産のブドウ山椒(さんしょう)のソースをかけた逸品。シカ肉は、県に紹介された加工業者から仕入れた厳選のAランクの肉を使っている。

 取材で訪れた際、シカ肉の「内モモ肉のロースト」とともに味わってみた。肉はきめ細かい舌触り。噛(か)むむとほどよい弾力があり、口の中でほどけるような食感がある。臭みはまったくなく、ほのかに脂の甘味を感じる。

 「きちんと調理されたジビエを食べると、(お客さんは)そのおいしさに驚いて一気にファンになってくれる」とオーナーシェフの田辺美里さん。

 県が推奨する加工業者のジビエ肉を使用する店は、ここだけではない。ジビエ料理を提供する店と協力して県が毎年展開するキャンペーン「わかやまジビエフェスタ」への参加店は、平成23年度の40店から令和元年度には64店と1・6倍に増えた。

 普及の背景には、和牛のように肉の品質を格付けするため県が平成25年度に導入した独自の等級制度がある。

 県が認証する処理施設で解体され、専門の研修を受けた格付員が審査した肉を「わかやまジビエ」と認定。散弾銃で仕留めたり、腹部を撃ち抜いたりした野生鳥獣の肉は品質が落ちるため使用せず、厳格に定めた解体や血抜きの方法に沿った肉のみを流通させている。

 格付けは和牛を参考にして「皮下脂肪の厚さ」「肉の締まり、きめ」「肉の光沢」「脂肪の色沢(しきたく)と質」の4項目で実施。シカは上からAとBの2等級、イノシシはA、B、Cの3等級で評価している。

 「イノシシの場合、ぼたん鍋なら脂の乗ったAランクのロース、煮物なら脂の少ないCランクのモモなど、料理ごとに使い分けられる。認証制度で店が希望する肉を入手しやすくなり、消費拡大につながっているのでは」と県の担当者。

 一方、野生鳥獣による県内の農作物被害額は、30年度は3億円を超え、県は鳥獣害対策との一石二鳥も狙う。

 ジビエ料理は近年、若い女性らの間でブームとなっており、国も令和元年度までにジビエ利用量を約2600トンに倍増させる計画を打ち出すなど、消費拡大を後押ししている。

 農林水産省の担当者は「ジビエ活用の動きは全国的に広がりつつあるが、肉を格付けして付加価値を高めるという取り組みは、和歌山以外で聞いたことがない。先進的な取り組みだ」と高く評価。11月には県選出の二階俊博・自民党幹事長も同県田辺市のジビエ加工施設を視察し、「ジビエは立派な資源。積極的に活用し、農作物の鳥獣被害をチャンスに変えるべきだ」と訴えた。

 等級制度という独自の取り組みが成果をみせ始めている和歌山県。仁坂吉伸知事は「多くの人にPRし、県外にも売り出していきたい」としている。

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