□ホールマーケティングコンサルタント、LOGOSプロジェクト上級研究員・岸本正一
その昔、遊技参加人口が3000万人といわれた時代を振り返ると、あれは一種のブームが巻き起こした結果であり、今後、遊技参加人口が増加に転じるためには、「パチンコブーム」なるものがもう一度必要だというのが私の見解だ。
ブームが過ぎると、そこには「本当に好きな人」だけが残る。ボウリングブームも然り。週末には2時間待ちが常態化していたボウリングも、現在では「本当に好きな人」が楽しむスポーツであり、娯楽である。乱立したボウリング場は淘汰(とうた)され、「本当に好きな人」のボリュームに見合った数に収束している。アイルトン・セナといえば誰もがその名を知っていたモータースポーツの頂点であるフォーミュラ・ワンも同様。絶頂期には全戦が地上波で中継され、鈴鹿サーキットには16万人を超える観衆が押し掛けた。現在はもうその勢いはないものの、熱心なファンは今でも観戦に出向いている。
ブームが去ったが、ボウリングもフォーミュラ・ワンも、そのテクノロジーは当時から明らかに進化している。例えばフォーミュラ・ワンの場合、「エンジン」は「パワーユニット」と呼ばれるハイブリッド・ターボの時代に突入して、コースレコードが更新され続けている。つまり、レジャーやスポーツにおけるテクノロジーの進化は、それが必ずしもブームに直結しないと考えることもできそうだ。「これだけ進化したのに」と、ブームが再来しないことを嘆きたくなるだろうが、どうやら消費者はその進化自体にはあまり興味を示さないようだ。
「国民的」というレベルでの「パチンコブーム」が再来するかは分からない。振り返って原因を分析することはできても、意図的に生み出すことができないのがブームというものだ。
従って、われわれは静かにその時期を待ち続けるしかない。「本当に好きな人」から愛され続け、支持され続ける中で、決して改善と進化に努力を惜しまないこと。それが再びブームを生み出すための必要条件であることは間違いない。
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【プロフィル】岸本正一
きしもと・しょういち 1963年生まれ。元SEの経験を生かし、遊技場の集客メカニズムを論理的に整理・研究する傍ら、全国のパチンコホールを対象にコンサルティングを行う。雑誌への連載やテキストの出版、セミナーでの講演なども手掛ける。オベーション代表。