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活況を見せる「コインランドリー業界」 災害時に対応、カフェ併設など多様化

 宇都宮市に1月末、災害に対応したコインランドリーがオープンした。災害で停電しても、備蓄しているLPガスを使った発電機などで電気を供給して、洗濯機や乾燥機を使用可能にする。コインランドリーを全国展開する「ジーアイビー」(名古屋市)にとって災害対応型の出店は今回が初めてで、同社の城野敏克取締役は「災害時でも地域貢献できる店舗に育てていきたい」としている。(大泉晋之助)

 有事の拠点に

 災害対応型のコインランドリーは、ジー社と産業ガス大手の「エア・ウォーター」(大阪市)が、カインズ宇都宮平出店(宇都宮市平出町)に出店した。ジー社によると、業界内でも同種の試みはほとんどないという。

 台風や地震などの大規模災害時には、停電で家庭用洗濯機が使用不能になる場合があるほか、浸水などで汚れ物が多く出ることもあり、コインランドリーは被災者の生活の支えになっている。一方、災害による生活インフラの寸断は、コインランドリーの稼働にも影響が出る。例えば、昨年、台風による大規模停電に見舞われた千葉県内では、停電エリアに住む被災者が稼働しているコインランドリーを求めて停電エリア外まで探し回る姿が見受けられた。このためジー社は「災害時でも利用できるコインランドリー」の必要性を痛感したという。

 今回、新たにオープンしたコインランドリーは、LPガス仕様の発電機などを備えLPガス3日分を常時備蓄。停電時も発電機を通した電力供給で洗濯機や乾燥機が稼働できる仕組みだ。外部電源への接続設備を備えており、発電機や移動電源車を持ち込んでも、コインランドリーの使用が可能になる。

 貯水槽や災害対応のシャワーなどを常備し携帯電話の充電もできるため、有事には地域住民の災害拠点として開放可能。ただ、断水の場合には洗濯機が使用できなくなる。

 今後、地域の防災訓練などを通して、災害対応型コインランドリーの有用性を浸透させていくことを検討している。

 業界は活況・多様化

 コインランドリー業界は現在、活況を見せている。厚生労働省の調べによると、平成8年度に全国で約1万店だったコインランドリーは25年度には1万6千店を超えた。すでに2万店前後まで増加しているとの推計もある。

 業界関係者は「常時店員を置く必要がなく、人件費を抑えられるので、コンビニエンスストアなどに代わる投資対象になっている」と指摘。後継者不足などの影響で、県内を含めて全国的に店舗数が右肩下がりのクリーニング店とは対照的だ。

 この間、コインランドリー自体の雰囲気も変化してきた。かつては単身者や学生が使うというイメージが強かったが、現在は、ファミリー層のユーザーも多い。宇都宮市内に住む女性会社員(35)は夫と2人の子供の4人家族。「冬や梅雨時は洗濯物が乾かない。かといってクリーニング店に持っていくほどではないものが多く、大量に洗濯・乾燥ができるコインランドリーは便利」という。

 カフェが併設されコーヒーなどを飲みながら待ち時間をゆったり過ごせるタイプが首都圏を中心にオープンして話題になるなど、その業態も多様化の過程にある。災害対応型の出店は、業界の活況・多様化の一端を示しているかもしれない。

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