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新入社員研修にコロナの壁 対面形式できず企業側も不安

 4月下旬となり、例年なら今春入社した新入社員の研修がピークを迎えたり、配属が始まったりする時期だ。しかし、今年は新型コロナウイルスの感染拡大で、新入社員研修も集合形式が難しく、インターネットを使った在宅でのオンライン研修などを余儀なくされている。対面研修がほとんどできないことで、新入社員だけでなく、会社側も不安を抱えているのが実情だ。

 「うちだけじゃなく、日本全体でこの世代の離職率が高まるのではないか」

 大手銀行の中堅社員は、新型コロナの影響で「同期の絆や愛社精神を育む場」でもある研修が、例年と同じようにできない影響を心配する。大型連休後に会社を辞める「五月病退職」に加え、退職代行サービスなどがここ数年で急増し、高まっている新入社員の早期離職リスクが、新型コロナの影響で、さらに上昇する懸念があるからだ。

 対面研修が実施できないことについて、東京ガスの担当者は「講師、新入社員双方の反応が見えづらい」と話す。大手自動車メーカーの関係者も「ものづくり企業にとってリアルな体験は重要。工場研修や試作などができないのは、人材育成にとって痛手」とこぼす。

 特にトヨタ自動車など大手メーカーは、普段から「eラーニング」で遠隔研修ができる態勢を整え、「ビジネスマナーやデスクワークといった座学で悩むことはない」。だが、問題は工場や販売店といった“現場”での実地研修だ。この「実体験を通して企業理念を伝えられる場」(大手メーカーの広報担当者)を、いつ与えることができるのか分からない状態が続く。

 総合商社では、三菱商事、三井物産は部門への配属を終え、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング、職場内訓練)に移行するが、丸紅は全社で実施している原則在宅勤務の期間に配属を行わず、教材を追加して研修を継続するなど対応が分かれる。

 伊藤忠商事は「過去に経験したことがない難局で、対処法は誰にも分からない。新入社員も経営や事業について知恵をめぐらせるチャンス」とし、積極的な提案を求める考えだ。

 若手社員の育成に詳しいリクルートマネジメントソリューションズの桑原正義主任研究員は、「対面できない新入社員の心理的な不安は大きい。業務よりも人とのつながりを意識させるコミュニケーションが必要で、チャットや電話など、ちょっとしたつながりでも不安解消につながる」とアドバイスする。

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 ■各社の新入社員研修の状況

 キヤノン 6日までリモート研修だったが、7日以降はeラーニングでの自習に

 富士通 パソコンなどを支給。20日からは部門別に分かれテレワークでの研修

 みずほ銀行 例年、入行後2週間目から実施する支店での基本業務研修は断念

 伊藤忠商事 通常よりも若干早く、各部門に配属。配属先でオンラインOJT

 三菱商事 1日に配属先は発表済み。すでに配属先でオンラインのOJTや研修

 三井物産 予定通り13日に部門に配属。教育係との面談後に実務研修を開始

 住友商事 ウェブによる在宅研修で開始し、13日以降は配属先でウェブ研修

 丸紅 在宅勤務期間中は配属をしない。長期化でeラーニング教材を追加

 住友不動産 例年は座学を中心とした集合研修だが、今年はオンライン受講に変更

 東急不動産 健康状態の報告を義務付け。配属日を延期しオンライン形式の研修内容を増やして対応

 サントリーHD 施設での合同研修をやめ、在宅研修に変更。配属したが、在宅で勤務

 ※HDはホールディングスの略

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