ワークスタイル最前線

在宅勤務で広がる電子化 脱はんこ宣言も続々

 新型コロナ、脱はんこ宣言続々

 「決めました。印鑑を廃止します」。IT企業のGMOインターネットの熊谷正寿会長兼社長は、ツイッターで宣言した。押印のための出社が在宅勤務の壁になるとして、書類での契約を電子契約に切り替えた。同様の動きは他企業にも広がる。新型コロナウイルスは日本特有の「はんこ文化」に変革を促している。

 在宅勤務への移行後に「脱はんこ」路線を打ち出したフリーマーケットアプリ大手メルカリ。契約書や役所への申請書など押印が必要な書類は月に数百枚に上るが、はんこは機密上の問題から社員が自宅に持ち帰ることが難しい。法務部門で働く女性は「はんこを押すために輪番で誰かが出社していた」と振り返る。

 代替手段となるのが、契約の当事者同士がインターネットのクラウド内でやりとりする電子契約だ。暗号化技術を使った電子署名や、合意日時を記録する「タイムスタンプ」で改竄(かいざん)を防ぐ。電子契約サービスを提供する弁護士ドットコムは、新型コロナを受けて新規の取扱件数が倍増。担当者は「書類郵送の手間や紛失の恐れがない」と利点を強調する。

 海外では自筆の署名(サイン)が一般的で、実務的な商取引に今も印鑑を使う先進国は珍しい。日本の印鑑は中国から伝わったとされ、本人の意思を証明する手段として発展したが、現代では複製が容易になった。新興企業を中心に「合理的でない」との声が、かねてから上がっていた。

 ただ国内には印鑑を前提にした制度や商習慣が根強く、現行法では電子署名の効力を十分に担保する規定が存在しない。企業法務に携わる弁護士でつくる日本組織内弁護士協会の渡部友一郎理事は「法的根拠の乏しさが大企業を動けなくしている」と指摘する。

 政府の規制改革推進会議は、はんこ見直し議論を本格化させ、民間契約の法制度を検証するほか、行政手続きに押印を求める制度を改める方針だ。はんこメーカーのシヤチハタは時代に適応しようと、クラウド上の文書データに押印できる電子印鑑サービスを強化する。新型コロナが投じた一石が、官民を巻き込んで波紋を広げつつある。

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