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スパコン富岳「日本の技術力示せた」「輝かしい成果」 関係者が喜びの会見

 理化学研究所の新型スーパーコンピューター「富岳(ふがく)」がスパコンの性能を競う世界ランキングで首位となったことを受け、関係者が22日、設置場所の神戸市内で会見し、「日本の技術力を示せた」などと喜びを語った。

 理研の松本紘理事長は「富岳はスパコンの性能を示す4つの部門で1位となり、四冠馬ならぬ四冠機となった。輝かしい成果にほっとしている」と語った。「トップに立っても慢心することなく、性能をもっと引き出せるよう、邁進(まいしん)していきたい」と意欲を込めた。

 製造と開発を担った富士通の時田隆仁社長はオンラインで登壇し、「世界に誇れるスパコンを作るのだと開発に取り組んできた。日本の技術力とものづくりの強さを世界に示すことができた」と述べた。

 富岳は計算速度を競う「TOP500」のほか、自動車や飛行機の設計などに使う実用的な計算の処理速度や、人工知能(AI)開発向けの計算性能、大規模データの解析性能の4つの指標でトップとなった。

 理研計算科学研究センターの松岡聡センター長は「(これらの指標で)1位を取ろうとして作ったマシンではない。国民が高い関心を持つ社会課題を解決できるよう、シミュレーションやAI、ビッグデータなどに対応するソフトウエアが最高の性能を出せるよう設計した。その結果としての世界一だ」と、富岳の設計思想の正しさに自信をのぞかせた。

 富岳は石川県かほく市の富士通子会社の工場で製造され、昨年12月に出荷を開始。今年5月半ばに理研への搬入を完了したばかりだ。この間、世界では新型コロナ感染症が猛威をふるい、一時は富岳の製造や開発の継続も危ぶまれたという。

 富士通における富岳の開発部門トップである新庄直樹理事は「世界中でロックダウン(都市封鎖)が実施されるなかで、部品の調達が途切れるかもしれない局面もあった。搬入が完了してからも、機器に実際に触る必要がある人員を除いて、ほとんどはリモートワークで作業した。難しさはあったが、密に連絡を取り合い、なんとか予定通りに進めることができた」と、安堵(あんど)した様子を見せた。

 富岳は来年度の本格稼働を目指し、ソフトウエアの開発や、機器を安定して動かすための調整が続いている。構想段階から計画を率いてきた理研の石川裕プロジェクトリーダーは、富岳の名前が富士山にちなむことから、開発の進み具合について「8合目をやっと過ぎたところだ。富士は8合目より上になると、厳しい道が続くという。気を引き締めて、さらに調整を進めていきたい」と話した。

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