米国内での2020年の統合型リゾート施設(IR)企業の売上高がラスベガスで19年比45%、その他の地域で30%、落ち込む見通しであることが、国際格付け会社のリポートで判明した。新型コロナウイルス感染拡大によるもので、米市場での業績悪化が米系IR事業者の日本参入にも足かせとなるのは必至だ。大阪府市は23日、事業者選定の延期方針を示したが、事業者の苦境が開業時期や事業規模に影響する可能性がある。(黒川信雄)
格付け会社フィッチ・レーティングスが今月まとめたリポートによると、米国のIR産業の集積地であるラスベガスでのIR企業の売上高は、20年に続き、21年も19年比20%減と大きく落ち込み、米国内の他地域も21年は同10%減となる。
19年の水準に戻るのは、ともに23年となる見通し。フィッチは「経済が減速し、コロナでIR施設運営や人の移動が抑制されるなか、市場は(緩やかな)U字型の回復にならざるを得ない」と指摘した。
ラスベガスは特に域外からの旅行者の比率が高く、MICEと呼ばれる、IR施設内での国際会議といった大規模イベントへの依存度が高いことから、回復は遅れるという。
米市場への打撃は、米IR事業者の対日進出計画にも影響を及ぼす可能性がある。すでに米最大手ラスベガス・サンズは5月、コロナ禍で経営が悪化するなか、日本参入を断念した。
現在、日本参入に手を上げている主要事業者は、オリックスと共同で大阪参入を目指すMGMリゾーツ・インターナショナルと、横浜に参入意向とされるウィン・リゾーツの2社。
ただ、感染拡大を受け、ラスベガスを主力市場とするMGMは3月中旬に米国内の全施設を閉鎖し、ウィンも相次ぎ施設を閉じた。両社は現在、順次施設の再開を進めている。
IR情報サイトを運営するキャピタル&イノベーションの小池隆由社長は「米市場の低迷長期化は、IR事業者の財務悪化を招きかねない。大阪府市の場合、事業者の総投資額は9300億円と見積もられているが、巨額投資が困難になる可能性もある」とした上で、「自治体は、IRの事業規模縮小などの検討を進める必要がある」と指摘する。
日本国内のIR計画をめぐっては、大阪市の松井一郎市長が今月23日、「新型コロナの影響で事業者側との打ち合わせも進んでいない」として、7月に予定していたIR事業者の応募書類の提出時期を当面の間、延長すると発表した。9月ごろとしていた事業者決定の時期も先送りとなる。
横浜市でも、IRの誘致事業の要件をまとめた実施方針の公表が延期されている。