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レジ袋有料化は第一歩 地球環境保護へ使い捨てプラ削減

 レジ袋の有料化が始まった。プラスチックごみによる海洋汚染をゼロにする取り組みの一つである。クジラやウミガメといった海洋生物の胃の中から、しばしばレジ袋が見つかる。レジ袋は野外で紫外線や風などの力で劣化・微細化し、細かい「マイクロプラスチック」になる。

 これらは小魚や二枚貝、カニなど海の小さな生物に取り込まれ、食物連鎖を通して生態系の隅々へ汚染を広げる。プラスチック製品の中でもレジ袋は軽く、海ごみになりやすい。薄いのでマイクロプラスチックにもなりやすく、1枚の袋から数千個の粒子が生成すると考えられる。

 プラスチックには可塑剤や紫外線吸収剤などの化学物質が添加剤として入れられており、中には有害なものもある。レジ袋にもプラスチックを柔らかくするための可塑剤の一種、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)が添加されている。

 DEHPは子供の性成熟に影響を与えるため、おもちゃへの配合が禁止されている物質である。レジ袋を食べることはなくとも、マイクロプラスチックになり、それが魚や貝に取り込まれると、食品を通じて子供がDEHPに暴露されることになる。

 さらにプラスチックは海の中で有害化学物質を吸着することで有害性が増す。レジ袋はこれを吸着する性質が一番大きいポリエチレン製だ。

 このように問題の多いレジ袋の規制は既に世界100カ国以上で行われており、遅ればせながら日本で規制が始まることに意味はある。しかし、企業が設定する販売価格が安いので削減の動機づけになるかは疑問だ。海外ではレジ袋の使用自体を禁止する国もある。

 厚いレジ袋は繰り返し使えるとして有料化の対象外となっているが、遅かれ早かれ全てのプラスチックは劣化してマイクロプラスチックを生成する。さらに、25%以上の植物素材(バイオマス)を含んでいれば、地球温暖化対策になるとして対象外となる点も問題である。バイオマスから作られたものの多くは同じポリエチレンなので、海へ出たら分解されない。

 もう一つの対象外「海洋生分解性プラスチック」も、実験室では微生物によって分解されても、海では分解されない場合がある。実際、東京湾の海底でいわゆる生分解性プラスチックがマイクロプラスチックとして検出されている。

 特に大きな問題は、レジ袋をスケープゴートにして他のプラスチック、特にペットボトルの生産や使用が守られている点である。海や川のプラスチックごみで一番目立つのはペットボトルだ。食品トレー、使い捨て容器も多く、削減の対象はレジ袋だけではない。

 新型コロナウイルスの感染拡大で使い捨てプラスチック容器などの使用量が増えている。プラごみによる海洋汚染と、ごみを燃やすことによって加速される地球温暖化の防止という緊急かつ重要な2つの課題を同時に解決すべきであることを忘れてはいけない。

 有料化は使い捨てプラスチック削減のほんの第一歩だと考え、他の使い捨てプラスチックの問題に、消費者も業界も行政も取り組まなければならない。

【プロフィル】高田秀重

 たかだ・ひでしげ 東京農工大教授。1959年東京都生まれ。東京都立大で理学博士号取得。環境化学が専門。米ウッズホール海洋研究所などを経て2007年から現職。共著に「環境汚染化学」。

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